音楽配信の中心となったのは相変わらずAppleのiTunes Storeだった。
なにかイベントがあるたびに、話題になるビートルズとの関係は、2月の電撃的和解から始まった(Apple商標訴訟がついに決着――“Apple”はApple Inc.のものに)。
Appleという名称についてはApple Inc.が獲得し、Apple Corpsにライセンスするという形で決着がついた。これで、AppleはiPodにしてもiTunesにしても、自由に音楽に関する活動を行えるようになったわけだ。商標というトゲがとれたことで、Appleは“Free As A Bird”になったと言える。
その後は、ビートルズの各メンバーのカタログが次々にiTunes Storeに登場する。まずはサー・ポール・マッカートニーがiTunes Storeで新譜を予約開始し、さらには新曲でAppleのTVコマーシャルにも出演。ジョン・レノン、リンゴ・スター、そしてジョージ・ハリスンと、メンバーのソロアルバムのほとんどがiTunes Storeで購入可能になった。
いよいよ次は本体、ビートルズのデジタル配信を待つのみとなったわけだが、その前に、ダウンロード配信未対応の大物がもう1組いた。レッド・ツェッペリンである。
ロンドンでの一度きりのライブを、その内容においても成功させたレッド・ツェッペリンは、全曲集、全アルバムをiTunes Storeで販売した。
しかし、ミュージシャンがすべてiTunes Storeになびくかというと、そうではない。独自の流通チャンネルを切り開こうという動きも出てきた。レディオヘッドだ。
新作アルバム「IN RAINBOWS」の価格を購入者が自由に決められるというユニークな販売方法は、レコード会社を通さない手法として、業界、特に小売り店に衝撃を与えた。その結果どうなったかという点については、調査会社comScoreは若干否定的な見方をしているが、バンドはその後CD販売も開始するなど、いろいろな方向を模索しているようだ。
レディオヘッドのアルバムの持つもう1つの意味は、「DRMフリー」だ。スティーブ・ジョブズ氏の「4大レーベルはDRMを捨てよ」という公開書簡を受け、DRMをつけない配信にEMI Groupが踏み切った。この動きに追従するメジャーレーベルも出ている。AppleはDRMなしAACフォーマットのiTunes Plusでいちはやく対応した。
iTunes Storeのライバルサービスも、これを利用しようと考えた。DRMフリーのMP3ならば、劣勢のWindows DRM対応デバイスではなく、音楽再生の標準プラットフォームとなったiPodでプレイできるからだ。
まずは安さを売り物にしているWal-Martが1曲94セントという割安価格でMP3楽曲を販売開始。しかし、さらなる大物、Amazonが参入してきた。
電子書籍リーダーのKindle発売でやや衝撃は薄れたが、DRMフリーのMP3楽曲のみを販売するという戦略で、Appleに奪われた、音楽販売におけるランキングを取り返そうとしている。
新しい音楽サービスについては、ロイターによるまとめ記事を読んでいただくといいだろう(2007年はiTunes対抗サービスの年――新しい音楽サービスが続々登場)。
中でも注目は、SNSとストリーミングによる楽曲提供を組み合わせたimeemである。4大レーベルと次々に提携し、合法的に無料で楽曲を聴くことができる。日本からもアクセス可能。SNSが提供する音楽サービスにも大きな影響を与えそうだ。
2008年にはMicrosoftのZuneが提供するSNS機能についての評価も定まってくるだろうし、iTunesのソーシャル機能といったこともうわさされている。音楽配信も、FacebookやOpenSocialなどの動きと絡んでくるかもしれない。
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