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AMDの“沈黙”が呼ぶ疑念

» 2008年01月21日 10時12分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 AMD経営陣は1月17日の四半期決算発表会見でクアッドコア関連の数字を強調したが、製品と「アセットライト」戦略に関する詳細はほとんど明かさなかった。

 ヘクター・ルイズCEOとダーク・マイヤー社長は17日のアナリスト向け会見のほとんどを、期待外れに終わった2007年第4四半期決算についての説明に費やし、2008年の製品ロードマップについての説明にはほとんど時間を割かなかった。

 AMDは5四半期連続で赤字を出しているが、新製品が一助となって今年下半期までに黒字転換できるとの期待をかけている。

 しかし、第4四半期決算の純損失が17億7000万ドルだったと発表したこの会見で、ルイズ氏とマイヤー氏は、第2四半期に登場が見込まれる新モバイルプラットフォーム「Puma」を含め、新製品についてほとんど語らなかった。ただマイヤー氏は、この新プラットフォーム採用を望むシステムメーカーから、これまでに100件の支持を勝ち取ったことを明らかにした。

 同社のクアッドコアプロセッサは幾つかの技術上の問題に見舞われたが、経営陣が言いたかったのは、クアッドコアを市場に出すという約束をAMDは守っているということだ。第4四半期にAMDは約40万個のクアッドコアプロセッサを出荷でき、マイヤー氏によると、デスクトップ向けプロセッサPhenomを2種類と、サーバ向けのOpteronプロセッサも出荷した。

 クロックスピードを向上させた高性能クアッドコアプロセッサも、第2四半期までに出荷される見通しだ。さらに同社はトリプルコアプロセッサの出荷準備も進めている。ゲーム用やハイエンドPCに適したクアッドコアプロセッサに比べ、トリプルコアはもっと一般的な層にアピールできると経営陣はみる。

 AMDは、マイクロプロセッサ全体の売上高は前期比で11%増えたと報告。サーバ製品の売上高はクアッドコアOpteronにけん引され22%増加した。

 経営陣はAMDのロードマップにそれ以上焦点を当てなかったが、アナリストの目には、大部分が振るわなかった2007年を経て、AMDが少なくとも部分的に勢力を盛り返しつつあることが、今回の四半期決算で示されていた。この数字は、同四半期中にAMDがIntelから市場シェアをいくらか奪ったことを示すものでもあるかもしれない。

 「サーバ製品の好調と、高性能グラフィックスプロセッサおよびデスクトッププロセッサのPhenomを予定通り出荷できたことにより、AMDは2008年に浮上するだろう」。Technology Business Researchのアナリスト、ジョン・スプーナー氏は報告書にこう記した。

 会見でマイヤー氏は、AMD初の45ナノメートル(nm)クアッドコア製品の準備を進めており、今年下半期までには市場に出す予定だとも語った。その第1陣となる「Shanghai」は予定通りに出荷できる自信があると同氏。Intelは11月から45nmプロセッサ「Penryn」を製造している

 AMDの全体像からは、生産高に関連した「アセットライト」「アセットスマート」という戦略も抜け落ちていた。ルイズ氏は、AMDは目標に向かって前進しているという以外、この戦略についての質問には一切答えなかった。

 AMDは、プロセッサ開発におけるCharter SemiconductorおよびIBMとの提携も強化している。しかしこうした関係が、アセットスマート戦略とどうかみ合うのかは不明だ。

 詳細が不明なことにいら立ちを見せるアナリストや業界関係者もいる。

 American Technology Researchのアナリスト、ダグ・フリードマン氏は報告書にこう記した。「ファブライト/スマート、アセットライト/スマートが具体的にどう影響するのかを量的に測るのが難しい状況が続いている」

 「その結果、われわれのモデルに照らした時に、半年後のビジネスモデルも同じようなものだと自信を持って言い切れない。短期的にはファブライトのメリットがあるかもしれないが、最初の1年から1年半の移行期間は不安定な状況に見舞われ、AMDのロードマップと製品の信頼性への顧客からの疑念が増すかもしれないとわれわれは見ている」

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