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「ダビング10」と補償金の議論は消費者不在だ

» 2008年06月02日 21時01分 公開
[岡田有花ITmedia]

 私的録音録画補償金と「ダビング10」の議論が混迷を極めている。メーカー側は、ダビング10のようにDRMがかかったコンテンツには補償金は不要、権利者側は補償金の対象とすべきと主張。妥協点が見いだせず、6月2日に予定されていたダビング10開始も延期された。

 補償金はそもそも、消費者が支払っており、コピーワンスやダビング10機器を購入・利用するのも消費者だ。だが今回の混迷は権利者とメーカーの対立に終始し、消費者はかやの外だ。

 「利用者の立場に立って考えている」――JEITAも権利者もこう主張する。JEITAは「iPodなどへの課金は、消費者に不合理な負担を強いるもの」と、権利者は「JEITAが言う通りに補償金を縮小・廃止すれば、メーカーが補償金にまつわるコストを支払わずに済み、そのコストが消費者にふりかかる」と説く。

 それぞれ一理あるかもしれない。だが、それぞれが消費者に実際に尋ねもせず「こっちのほうが消費者のためになる」と主張し合うのはどうも腑に落ちない。「消費者の声」という聞こえのいい言葉を利用して、自らの利益を図っているようにも感じる。

 JEITAは「消費者の声を聞いた」と言うかもしれない。実際、「地上デジタル放送機器やデジタル音楽プレーヤーに補償金を課すことに反対」と答えた人が8割というアンケート結果も公表している。だがこのアンケートは、一部の質問項目について、JEITAの意見に沿う答えが出るような書き方がされているように感じられ、消費者の意見という形を借りてJEITAの主張を押し通そうとしているようにも見える。

 コンテンツも録音・録画機器も、購入するのは消費者だ。にも関わらず、まるで関係ないところで議論がこじれ、「ダビング10」を待っていた消費者が迷惑を被っている。おかしな構図だ。

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