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» 2008年07月11日 08時22分 UPDATE

補償金とダビング10 JEITAの本音はどこにある

「JEITAは2年前の議論を蒸し返し、ちゃぶ台を返した」――録音録画補償金についての議論が、権利者とJEITAの対立でこう着した。JEITAは何を主張し、議論をどちらに持って行こうとしているのだろうか。

[岡田有花,ITmedia]

 7月10日に開かれた私的録音録画小委員会(文化庁長官の諮問機関・文化審議会内)で、電子情報技術産業協会(JEITA)と権利者側の意見が対立し、議論が暗礁に乗り上げている(“iPod課金”議論、振り出しに 権利者とJEITA、小委員会で激論)。

画像 左から榊原美紀氏、亀井正博氏、長谷川英一氏

 「DRMがあれば補償金は不要」と主張し続けるJEITAに対し、権利者は「せっかく進んだ議論を突然2年前の振り出しに戻した」と批判。文化庁の川瀬真・著作物流通推進室長も「JEITAは以前の主張を蒸し返し、ちゃぶ台を返した」と言い、学者の委員からは「このままでは結論が出ない。JEITAはもう少し譲歩できないか」と求める声も挙がった。

 JEITAは何を意図し、補償金の議論をどこに持って行こうとしているのだろうか。小委員会後に開いた会見で、著作権専門委員会委員長の亀井正博氏、同副委員長の榊原美紀氏、常務理事の長谷川英一氏が記者からの質問に答えた。

――JEITAが今回の小委員会で改めて主張した内容は、2年前の小委員会スタート時と変わっていない。繰り返される議論に、徒労感を表明した委員もいる。生産性のある議論を行うつもりはないのか

亀井 従来と同じ論点が議論されないまま放置されているとわれわれは理解している。DRMと私的複製の関係について今回JEITAが提出した法的な解釈に、学者の委員から異論も出たが、そういった面もきちんと研究してほしい。法的に整理されないまま妥協するともっと疲弊する。

 補償金は、複製によって生じた損失を補てんするという考え方だが、対価の還元の方法はそれだけではないだろう。契約と技術を組み合わせれば、何らかの新しいサービスでコンテンツを提供し、収益を上げ、クリエイターに還元するといった方法がいくらでも考えられる。メーカーが資することができるとすれば、技術開発やビジネスの提案の部分。win-winのモデルがあると思っている。生産的な議論を加速させていきたい。

榊原 北米では技術とビジネスモデルが一体化して議論が進み、そこで利益が出ており、補償金で損失を補償してくれとは言っていない。欧州はメーカーが補償金を支払っているが、欧州では先に法制度ができたためだ。

 デジタル録音録画機器に関しては、7、8割が補償の必要がない利用だという消費者アンケートの結果がある。そこを議論せず、補償金について権利者に歩み寄るかといえばNOだ。

――そもそも補償金は消費者が支払っているもの。なぜメーカーがここまでかたくなに反対するのか。権利者側は「実質的にメーカーが支払っているから、負担を逃れたいためだ」と言っているが

長谷川 補償金はメーカーではなく消費者が払っており、「協力者」として集めているのがメーカーという認識だ。消費税のように別にもらってるわけではないから、あいまいに見えるかもしれないが。JEITAは消費者の立場を代弁しているつもりだ。

亀井 権利者対メーカーの泥仕合といわれたが、もともと当事者ではない。だが寡黙でいると「なぜそのとき反論しなかった」と言われてしまう。権利者が納得し、機器を使ってもらえ、ユーザーも納得する状態を目指している。例えば、ダビング10でコピー制御しながら補償金を払うことになるとバランスが悪いと思っている。

――DRMでガチガチになるぐらいなら補償金を支払って自由にコピーしたいという消費者の意見もある

長谷川 いろいろな考え方がある。それを受け止めつつ、日々次のステップを考えている。

――JEITAはダビング10についての議論では「DRMがあれば補償金は不要」と主張している。その一方で、SCMS(Serial Copy Management System)というDRMがかかっている音楽CDについては、補償金の課金対象とすることを容認している。この主張は矛盾していないか

亀井 複製のコントロールの度合いがどれぐらいかということだ。SCMSは来歴からいってPCでは機能しない構造で、複製はn個できるから補償の対象となったと思う。1992年の議論だが。

――Blu-ray Discへの補償金課金が決まったが、地上デジタル放送録画機器は補償金の課金対象になるべきと考えているか

亀井 デジタル録画する場合は必要ないはず。デジタル放送で複製回数が技術的にコントロールされていることは事実だ。

長谷川 BD課金は、ダビング10スタートのために文部科学省と経済産業省が決めたこと。ダビング10スタートは歓迎するが、対象機器についてJEITAから申し上げたことはない。

――補償金に関する議論が平行線たどった場合、権利者は得られる補償金額が細るという損失があるが、メーカーに不利益はあるのか。小委員会では「時間稼ぎの作戦だとしたらとてもうまくいっている」という委員からの指摘もあったが

亀井 不利益は……考えたことがあまりない。われわれがこうして時間を割き、加盟企業も時間を割いているのが不利益と言えば不利益。ただ、議論自体に生産的な感じがしないので、このエネルギーは新しいほうに振り向けたほうがいいだろうとは思う。

――補償金の支払義務者を消費者からメーカーに変えるべきという権利者の意見もあった

亀井 反対だ。そもそも補償が何に対する補償なのかの問題。メーカーが支払い義務者となっているドイツでは、メーカーは著作権侵害に対する寄与行為を行っているという解釈だが、日本の法制度はそうではない。ドイツは違法行為に寄与しているとされるが、日本では適法行為への寄与だ。

――議論のゴールをどう考えてるのか。補償金の縮小を訴えていくのか。ほかの方法もあり得るのか

亀井 補償金は縮小・廃止が基本線だが、権利者が収益を得られる仕組み作りも必要だろう。われわれはインフラを作ったりビジネスを提案していくことで協力・支援していく。

――次回の小委員会がいつになるか全く見えない状態だが、今後JEITAは小委員会でどう主張を展開するのか。

長谷川 文化庁から次の議論についての提案を待つ。「もっと新しいことを考えていこう」と言いたい。

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