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パナソニック、テレビで攻勢 出荷1.5倍に 「今はチャンス」と大坪社長

» 2009年05月18日 07時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 大坪社長

 薄型テレビ市場が不況に見舞われ、国内メーカーが軒並み苦戦を強いられる中、パナソニックは強気の出荷計画を立てている。2009年度(2010年3月期)の出荷目標は1550万台と、08年度実績(1005万台)の約1.5倍。「他社が生産を増やしていない今がチャンス」と、大坪文雄社長の鼻息は荒い。

 08年度のテレビ事業は赤字。09年度も価格下落や新工場への投資などを織り込んで赤字を見込んでいるが、「今後数年、2500万台〜3000万台近くの伸びが見込まれる」とみて攻勢はゆるめない。

 新世代パネル「NeoPDP」など独自技術やデバイスを生かし、画質や省エネ性能、薄さなどをブラッシュアップ。同時にコストダウンも行い、「テレビの需要減速に対応しながら、他社を上回る販売を目指す」という。

 パナソニックの攻勢は、08年度を下回る生産台数目標を設定して収益を優先したソニーとは対照的だ。ライバルが守りに入っている今こそシェアを拡大するチャンスと踏み、来年度以降のジャンプアップを目指す。「09年度は踏ん張りどころ。1550万台をやりきれば10年度以降収益が見えてくる。テレビとつながる機器などで、総合力が生かせるだろう」

 3D映画を見られる家庭用のシアターシステム開発も加速する。大坪社長は、「北米では多くの映画館で3Dに対応している。これを家庭に持ち込めるようにしたい」と話し、規格の統一を推進する方針だ。3D対応プラズマテレビに加え、Blu-ray Disc(BD)やBDレコーダーも開発し、セットで提案していく。

新興国に攻勢、手本はタタ自動車

 「世界のマーケットで伸びているのは新興国の中間所得層。ここから逃れていては成長はありえない」――テレビなどの商品で、BRICs、ベトナム、インドネシア、メキシコなど新興国開拓を強化。「世界ナンバーワンに向け、ボリュームゾーンを狙う」という。

 新興国開拓のお手本は、低価格な自動車でインド市場を席巻したタタ自動車(Tata Motors)だ。

 「ボリュームゾーンは安物というとらえ方はしない。タタの車は、購入した現地の人に聞けば『欲しかった車が手に入った』と話す。大多数の人が欲しいと思うものを生み出す必要がある」

 新興国ユーザーの心をつかむには、「日本でのマーケティングや設計には限界がある」とみて、海外拠点で設計やマーケティングを行う方針も示した。

 この方針もライバルのソニーと対照的だ。ソニーは、「世界各地域に設計拠点や製造工場は不要。基本的に中央(日本)でやる」(ソニーの大根田伸行CFO)とし、各国の拠点を集約する方針を示している。

継続的な構造改革で収益確保へ

 2009年度も不況は続く見通し。「力強い回復はありえないと考え、次への備えをすべき」と大坪社長は気を引き締め、不採算事業の整理など経営合理化を続けていく考えを改めて示した。

 「イタコナ」(プリント基板など板や、樹脂など粉の削減)と呼ぶ原価削減策を徹底。固定費も削減し、損益分岐点を前年度比10%低減することを目標にしている。

 09年度の連結業績見通し(米国会計基準)は、売上高が前年度比9.9%減の7兆円、営業利益が2.9%増の750億円、税引き前損益は950億円の赤字(前期は3826億円の赤字)、純損益は1950億円の赤字(同3790億円の赤字)を見込む。「減収は避けられないが、営業利益増額、純損益改善を目指す」

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