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» 2009年08月25日 07時00分 UPDATE

インホイールモーターのEVを世界に 異業種出資の慶応発ベンチャーが始動

ベネッセなどが出資する慶応発ベンチャー「シムドライブ」は、インホイールモーターを採用した安価な電気自動車の普及を目指して設立された。2013年に提携メーカーから量産化されるのが目標だ。

[小笠原由依,ITmedia]
photo 「シムドライブ」のロゴと(左から)IRIの藤原所長、清水教授、福武会長、ガリバーの羽鳥会長

 独自技術による電気自動車(EV)の普及を目指す慶応義塾大学発のベンチャー「シムドライブ」がこのほど設立された。車輪のホイールにモーターを組み込む「インホイールモーター」の採用による低コストなEVの量産化を掲げ、趣旨に賛同したベネッセコーポーレションなど異業種も出資する産学連携ベンチャーだ。

 同社は、EV技術を研究してきた同大環境情報学部の清水浩教授が社長として8月20日付けで設立。資本金は4400万円で、同大の支援資金のほか、ベネッセや丸紅、中古車買い取り販売大手のガリバーインターナショナル、大型望遠鏡関連技術を開発する京都大学発ベンチャーのナノオプトニクス・エナジーなどが出資する。

 会長にベネッセの福武總一郎会長が就任し、取締役としてはガリバーの羽鳥兼市会長、ナノオプトニクス・エナジー社長の藤原洋インターネット総合研究所長らが参加。顧問として元ソニーCEOの出井伸之氏らも名を連ねる。福武会長は「教育の仕事に携わるベネッセのミッションは、子供たちの明るい未来を作ること。子供たちの将来を考えると環境問題の解決は非常に重要で、電気自動車はその切り札になる」と出資の狙いを話す。

 新会社は技術の標準化や、実車の開発サポートなどを進め、2013年には同技術を搭載した電気自動車が提携企業から量産されている状態を目指す。

ガソリン車の4分の1のエネルギー

photo 清水社長は2004年、EVプロジェクト「Elica」に技術統括リーダーとして参加。同プロジェクトの実験用8輪駆動車は最高速度370キロを記録した

 社名は、国立環境研究所出身の清水教授が30年にわたって研究してきたEV機構「SIM-Drive」から付けた。同機構はインホイールモーター、インバーター、電池から成る駆動系と、それらの部品を載せるための強固なフレームで構成する。インホイールモーターは車輪にモーターを組み込んで直接駆動する仕組みで、一般の自動車に必要なギア機構やシャフトを省くことができ、エネルギー効率や、自動車全体の機構をシンプルにできる点などが特長だ。

 SIM-Driveは、ガソリン車の4分の1のエネルギーで走行でき、構造が簡単で部品点数も少ないため、量産すれば安価な電気自動車を販売できるという。「ガソリン自動車に比べて、高性能で高機能、しかも値段も安くないと普及はない。こういう気持ちでいままで電気自動車を開発してきた」(清水教授)

 中古車など既存車のボディに機構を取り付けて、電気自動車にすることもできるほか、「名車と言われるボディをSIM-Driveのフレームに乗せて、新しく電気自動車も作ることができる」(清水教授)。

 4輪車2輪駆動、4輪車4輪駆動、8輪車8輪駆動に対応するほか、トルクも700ニュートンメートル、200ニュートンメートル、50ニュートンメートルの3クラスを用意し、「1人乗りの超小型車からバスやトラックにまでさまざまな形態の車に対応できる」(シムドライブの高野正技術顧問)という。


photo 会場には過去に清水教授が開発した電気自動車も展示されていた。1997年開発された「Luciole」
photo 2001年に開発された「KAZ」
photo 2004年に開発された「Eliica」

 新会社は、電気自動車を早急に世界に普及させることが目的だ。普及方法について検討した上で、提携企業を広く募り、共同開発や技術の標準化を行う。提携企業からは、1社につき2000万円程度の資金を募り、共同研究で培った技術は自由に自社に持ち帰ってもらう。

 2013年には、提携企業による電気自動車の量産化を目指す。量産化段階では、提携企業からさらに2〜3億円を出資を受けた上で、約5年間は技術料などのロイヤリティも受け取り、その後はロイヤリティフリーにする計画。同社は、製造サポートや電気自動車の開発者・技術者の人材育成を行う。

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