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重かったXGP投資、外れたストーリー──ウィルコム、自力再建断念への道(2/2 ページ)

» 2010年02月18日 21時01分 公開
[ITmedia]
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 だが事業再生ADR申請が結果的に経営危機を広くアナウンスすることになり、顧客離れが進んだ。解約が相次いだ上、ADR手続き中ということもあり、テレビCMなどに必要なマーケティング資金が絶対的に不足し、新規獲得がままならない。純減ペースが加速し、一時は460万超だった契約者も、今年1月末には432万(うちPHSは424万)まで減っていた。純減という“出血”の影響は大きく、「返済延期による自主再建のシナリオは実現しにくくなっていた」(久保田社長)

 ADR手続きで債権放棄などの交渉を進めてきたが、一部で難航していたもようだ。こうした中「あらゆる選択肢を模索し、スポンサー探しを始めていた」(久保田社長)。そこに、日本航空の経営再建にも関わる再生機構、次世代無線サービスの免許取得を争ったソフトバンク、買収ファンドのAPが名乗りを上げた。ここに同社は自主再建を断念、会社更生法のもとで過程を透明にしながら早期再建を進める事前調整型(プレパッケージ型)の法的処理に踏み切った。

 一時期は上場を目指していたウィルコム。久保田社長は「上場していたら、マーケティング資金、開発資金などもあり、今とは全く違った姿が描けていたのでは」と話す。

「ナローバンドに可能性がある」

 管財人として同社に残る久保田社長は、XGPについて「ブローバンド技術規格はたくさんあるが、XGPは高速な上り速度、マイクロセル方式など、かなりユニークだ」とみる。スポンサー候補が「XGPについてかなり積極的だと聞いている」と明かし、支援が正式に決まり次第、XGPへの投資スケジュールも具体化する見通しだという。

photo COREが目指すスペック=08年5月

 データ定額、音声定額など、現行PHSが切り開いてきた世界もユニークなものだ。「携帯電話がブロードバンドだとすると、PHSはナローバンドの世界。安価であり、低電磁波な点など、携帯と全く違う市場を開拓できる。ナローバンドは社会インフラとして、大きな可能性がある」という。

 XGPと現行PHSの分離案が報道されているが、「XGPもPHSと共通部分を持っている。スポンサーには一体としてお考えいただいていると思っている」と話す一方、「技術的に共通性はあるとは言ったが、実際の事業の形に言及したわけではない」とも述べた。

 取締役は全員辞表を提出した。「社員の雇用はできるだけ確保したいが、スポンサーとの話し合いの上で具体的なことは決めていきたい」と不透明だ。だが久保田社長は「前を向いてほしい」と社員を励ます。「ナローバンドはかなり可能性がある。音声定額は高校生が喜んで使ってくれているし、これを拡大して多くの人に使ってもらうこともは十分可能だと思っている。スポンサーが決まればマーケティング資金もできる。春商戦ではできるだけ、元気なウィルコムをアピールしていきたい」

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