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見えてきた「Yahoo!モバゲー」の姿 10月開始、テレビCM集中投下

» 2010年06月04日 20時59分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ディー・エヌ・エー(DeNA)は6月4日、都内で開いたゲーム開発者向けイベント「モバゲーオープンプラットフォーム Forum2010」で、ヤフーと共同で構築するPC向けソーシャルゲームサイト「Yahoo!モバゲー」を10月にオープンすることを明らかにした。オープン時には、テレビCMを集中投下するなど大規模なプロモーションを展開。日本最大のPCソーシャルゲームプラットフォームを目指す。

 Yahoo!モバゲーは、「モバゲータウン」の各機能をPCから使えるサイトで、「Yahoo!ゲーム」のメインコンテンツとしてオープン。利用にはYahoo!JAPAN IDとモバゲーIDが必要。両IDをひもづけた上で、Yahoo!JAPAN IDでログインする。


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 ユーザーは、アバターを着せ替えたり、日記を書いたり、「ミニメール」で交流したりなどモバゲーの各機能が使えるが、メインの機能はソーシャルゲーム。まずはモバゲーで人気のゲームを移植し、モバゲーのソーシャルグラフ(友人関係)をそのまま引き継いで遊べるようにする。

 Yahoo!の各サービスと連携。「Yahoo!メッセンジャー」の連絡相手や「Yahoo!アドレスブック」に載っている友人をゲームに招待できるようにしたり、メッセンジャーやメール画面、Yahoo!JAPANトップページの「友達の近況」から友人のプレイ状況を確認できるようにする予定だ。


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 「モバゲーAPI」を活用したOpenSocialベースのプラットフォームで、外部のソーシャルゲームプロバイダーから広くゲームを募る。課金・広告売り上げの7割をソーシャルゲームプロバイダーに支払う。

 モバゲーには課金に慣れたユーザーが多いほか、「3Dアバター」(モバゲー独自の動きのあるアバター)と連動したゲーム用アバターアイテムなど、課金できるコンテンツも豊富にそろっているのが売り。オープン当日から課金サービスが使える予定で、マネタイズに関する講習会も開くなど、ゲームプロバイダーのマネタイズを強力にサポートする構えだ。

 課金決済手段には新たに、「Yahoo!ウォレット」を追加。ヤフーグループのIDCフロンティアが、ソーシャルゲーム用の仮想サーバを通常より低価格で提供する専用プランも用意し、インフラもサポートする。

 APIの仕様を6月14日ごろから順次公開し、7月22日ごろには開発用サンドボックスを開放。9月21日ごろにサービスのβ版をリリース、10月1日ごろに正式オープンする予定だ。「OpenSocialベースなので、mixiアプリなどほかのプラットフォーム向けに作ったゲームも移植しやすい。携帯のモバゲー向けゲームと連動したものや、3Dアバターを使ったゲームも大歓迎」(DeNAの守安功 COO)

「初速が重要」 総額10億円規模のプロモーション

画像 Yahoo!JAPANトップページで大々的にプロモーション

 「Yahoo!モバゲーは初速が重要。大きめなプロモーションをかけていく」(ヤフーの宮坂学コンシューマー事業統括部長)――PC上でのプロモーションはヤフーが引き受ける。

 オープン時にはYahoo!JAPANトップページのさまざまな枠を駆使して大々的に告知するほか、テレビCMも集中投下。広告価値換算で総額10億円規模のプロモーションを行い、短期間での認知拡大を狙う。「『PCでゲームやるならYahoo!モバゲー』というポジションを早期に築きたい」(宮坂統括部長)

 Yahoo!ゲームで人気の麻雀などカジュアルゲームのプレイページにもYahoo!モバゲーのソーシャルゲームの広告を掲載し、誘導していく。

日本最大のPCソーシャルゲーム基盤へ 略称は「ヤバゲー」?

画像 南場社長

 「オープン化は勇気のいる決断だったが、きょう、晴れやかな気持で大成功だったと言える」――DeNAの南場智子社長はこう振り返る。同社は昨年8月、携帯ゲームのオープン化を発表。昨年秋から自社製ソーシャルゲームの提供をスタートし、今年1月からは外部のゲームプロバイダーが開発したゲームを投入した。

 結果は大成功。ソーシャルゲームをドライバーにページビュー(PV)・売り上げが急成長し、3月の1日当たりのPVは約20億と、GREEやmixiモバイルの2倍以上に。月間の売上高が1億円を超えるゲームプロバイダーも「複数社出ている」(南場社長)という。

 Yahoo!モバゲーでPCソーシャルゲームでもナンバーワンを目指す。「日本のソーシャルゲームは携帯電話が中心だが、海外はPCが中心。なぜ日本でPC市場が拡大しなかったのか。それはヤフーとDeNAが組んでいなかったからだ」(南場社長)

画像 井上社長

 イベントに出席したヤフーの井上雅博社長は、「ヤフーとDeNAは勝つ確率が最も高いコンビでは」と自信をみせる。日本の携帯向けソーシャルゲームは10〜20代に人気だが、海外のPC向けだと30代以上の高年齢層ユーザーが多く、Yahoo!ゲームも30代以上がメインユーザーだ。「ARPU(1人当たりの売上高)の高い高年齢の利用者も取り込めるプラットフォームを作れたら、マーケットとしても期待できる。ゲームプロバイダーにもビジネスチャンスを提供できるのでは」(井上社長)

 4月の発表時には仮称としていた「Yahoo!モバゲー」は、そのまま正式名称になった。井上社長は「『ヤバゲー』と呼ばれるだろうというのが仮称にしていた一番の理由だったが、略称ヤバゲーでいいので親しんでいただきたい」と話し、南場社長も自ら「ヤバゲー」と紹介。ヤバゲーという略称は“公認”されたようだ。

「モバゲーから世界へ」

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 DeNAはモバゲーのゲームプラットフォームを、スマートフォンやiPadなどさまざまな端末にも横展開していきたい考え。海外進出も進め、「クロスデバイス、クロスボーダー」(南場社長)を目指していく。

 すでに、米国でiPhone向けゲームSNS「MiniNation」をスタートしているほか、中国ではSNS「天下網」を運営するWAPTXを子会社化するなど、準備を進めている。

 MiniNationのゲームAPIもオープン化する計画。「モバゲー向けのゲームを作れば、複数のデバイスに展開でき、世界にも出られるようにしたい」と南場社長は意気込む。

 「なぜITの領域で日本からグローバルリーダーが出ていないのか。1つの大きな成功事例をみなさんと作り、新しい日本の勇気になりたい。日本にもいくつかのソーシャルゲームプラットフォームがあるが、選んでいただいて決して後悔させないパートナーになることを約束したい」(南場社長)

 DeNAやグリーの成功で、ソーシャルゲームはネット業界の注目の的。この日のイベントも、用意された650席に800人以上が詰めかけ、100人以上が立ち見になるという大盛況だった。

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