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公取委に「危惧の念抱かざるを得ない」 JASRAC“無罪”審決で弁護団が批判

» 2012年06月18日 18時50分 公開
[ITmedia]
photo 田中豊弁護士

 「(“無罪”審決は)当事者としては喜ばしいが、公正取引委員会の仕事の仕方を審判官がこれほど批判することには危惧の念を抱かざるを得ない」

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が同業他社の新規参入を妨害しているとして公取委が排除命令措置を出し、6月12日に命令取り消しの審決が出されたことに関連し、JASRAC側がこのほど会見し、弁護団の田中豊弁護士(大江忠・田中豊法律事務所)は「法的な部分はわれわれが主張してきた通り」としつつ、公取委の審査のあり方を強く批判した。

 JASRACは放送局などと楽曲の「包括利用許諾契約」を結び、音楽著作権の使用料を、曲が利用された実数ではなく「放送事業収入の○%」といった形で包括的に算定して徴収している。公取委はこの手法が他の管理事業者の新規参入を妨害しているとして、2009年2月に独占禁止法違反(私的独占の禁止)で排除措置命令を出していた。

 田中弁護士によれば、この命令を取り消す審決文で審判官は「公取委の仮説の立て方や審査の仕方が間違っていたことを、40ページにわたって指摘している」という。例えば「客観的な証拠を取るのがおろそかなままに、口述証拠をたくさん取る。その取り方も、仮説を検証するために証人を用意しているとしつつ、仮説通りのことを供述調書に落とし込みたいという考えが見て取れる――と指摘されている」とし、「公取委を審判官がこれほど批判するということに危惧の念を抱かざるを得ない」と批判した。

photo JASRACの菅原瑞夫理事長

 一方、JASRACの菅原瑞夫理事長は、包括利用許諾契約について「(放送局が)大量に楽曲を使う時、1曲単位で料金を支払うのは極めて非合理。各管理事業者がそれぞれのレパートリーを全て提供できるようにすべき」とし、「そこでなお(JASRACに対する)疑念が残るなら、より合理的な徴収方法を放送局とともに考えていく」とした。

 また、公取委による審査に伴う経済的不利益について国家賠償を検討するか――という記者の質問に対しては「審決が出たばかりなので(そのような考えが)今あるわけではないが、協議会で検討していく」(菅原理事長)とした。

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