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» 2018年01月23日 16時25分 公開

「力学」の平原、「解析力学」の丘――物理学をゲームに見立てた“攻略Wiki”登場 「“魔導書”を絶版にしたくない」発起人の思い

物理学を「ゲーム」に見立てて、物理学の攻略情報を面白おかしく紹介する「物理攻略Wiki」がネット上で話題になっている。発起人に話を聞いた。

[井上輝一,ITmedia]

 「16世紀から17世紀ごろのガリレイやニュートンの時代に始まったとされる人気のゲームです」――こんな紹介で始まる、とある「ゲーム」の攻略サイトがネット上で話題になっている。その名は「物理攻略Wiki」。物理学を「ゲーム」に見立てて、物理学の“攻略”情報を面白おかしく紹介していこうというサイトだ。

物理学を「ゲーム」に見立てて、物理学の“攻略”情報を面白おかしく紹介する「物理攻略Wiki」

 「チュートリアル」「メインクエスト」「サブクエスト」「魔道書」などの見出しで分けられたメニューは、まさにゲームの攻略Wiki。メインクエストには、「力学」の平原、「解析力学」の丘、「電磁気学」の工場といった項目が並ぶ。

 個別のページを見ていくと、例えばこのゲームの「既知のバグ」として「電流と電子の流れの向きが逆」などが挙げられており、物理学を学んだことがある人がニヤリとするようなネタが仕込まれている。

Wikiらしい2カラム形式で、左側には「力学」の平原などのメインクエストが並ぶ。「取り返しのつかない要素」のページには、「既知のバグ」として電流と電子の流れが逆になっていることなど、物理学を学んだことがある人がニヤリとするようなネタが仕込まれている。

 このサイトを立ち上げたのは、『趣味で物理学』として書籍化もされたWebサイト「EMANの物理学」を運営するEMANこと広江克彦さんだ。既に「EMANの物理学」で物理学の各分野の解説ページを作った広江さんが、「攻略Wiki」の形で新たにサイトを開設した意図を聞いた。

隠れた“良書”を絶版にさせたくない

 「この数カ月、物理のことを考えることをサボってゲームばかりしていた」という広江さん。広江さんは、物理学の勉強過程をなんとかゲーミフィケーションできないか、長年考えていたという。しかし、分かりやすいルールにできず、実際のゲームの形にするのは無理があったと振り返る。

 ゲーム三昧の日々を送る中、広江さんは攻略情報を知るために攻略Wikiをよく閲覧していたという。そんなある日、「ふと、全てがつながった」(広江さん)

 攻略Wikiなら、物理学を学ぶ人の目標を「クエスト」として面白おかしく視覚化できる――。それだけではない。クエストをクリアするための「魔道書」(教科書)も分かりやすく紹介できる。この2つが「物理攻略Wiki」を立ち上げた理由という。

 魔導書は、分野別、著者別、出版社別に整理して掲載。「新たに良い教科書が次々と出ているはずなのに、多くの人は気付けていない。物理を学び始めた人たちが教科書選びで迷う様子も見てきたので、良い教科書を共有できる場を作りたかった」(広江さん)

分野別、著者別、出版社別に整理された魔道書リスト

 「教科書を書いたり、翻訳したりするのは大変なこと。気付かれずに埋もれていかないように、こういった場で共有することで、購入する人が増えていけば」――隠れた“良書”を絶版にさせたくない、著者や翻訳者を応援したいという思いも、物理攻略Wikiには込められている。

 Wikiという特性上、ページの編集は誰でも可能だ。サイトは2018年1月上旬に公開されたばかりだが、早速聞きつけた有志が活発に編集やコメントをしている。物理攻略Wikiは、学習者に対してゲームのようにとっつきやすいものにすることを目的としているが、物理を学んだ人がこれから学ぶ人に教えていく過程も、ゲーミフィケーションできているのかもしれない。

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