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» 2018年04月23日 09時00分 公開

“日本が知らない”海外のIT:フリーランスや単身世帯の「孤独問題」 ロボットは孤独を救えるか

フリーランスや一人暮らしの若者が抱える「孤独」という悩み。世界中でIoTを駆使した「脱・孤独」サービスが登場している。

[中井千尋,ITmedia]

 リモートワークやフリーランスといった働き方の多様化が進み、今世界中でミレニアル世代と呼ばれる若年層を中心に一人暮らしをする人が増えている。

 彼らの悩みの1つが「孤独」。そんな彼らの孤独感を解消しようとする、IoTを駆使した「脱・孤独サービス」が、韓国、北欧、そして日本と、世界中で続々と誕生している。

連載:“日本が知らない”海外のIT

日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。


「今誰か帰ってきたよ」  友人・家族の行動を逐一通知

 「Fribo」は、韓国の首都ソウルにある延世(ヨンセ)大学、第5の都市テジョンにある国立大学KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)の共同研究グループが、一人暮らしをするミレニアル世代の若者向けに開発したロボット。ネコのような耳を持つ愛らしい見た目が特徴だ。

 Friboは、独自の機械学習アルゴリズムを搭載し、友人や家族間のコミュニケーションを促進するのだが、そのやり方は一風変わっている。

 ユーザーの生活音――例えば、ドアを開け閉めする音や電気を点ける音、冷蔵庫を開ける音などを聞き分け、その行動内容を他のユーザーにFriboを介して音声で伝える。その通知がユーザーがチャットや電話などを始めるきっかけになるという。

 例えば、グループに含まれるユーザーの1人が帰宅したとする。すると、Friboは玄関のドアや電気のスイッチ音などを感知し、他のユーザーの自宅にあるFriboを通じて、「誰かが玄関のドアを開けたよ。帰ってきたみたいだね」と音声で教えてくれる。

fribo Friboの通知がきっかけでユーザー間のやりとりが始まる

 また、誰かが冷蔵庫を開けると、「誰かが冷蔵庫を開けたみたい。何を食べようとしてるんだろうね」などと伝えたり、グループ内で一番帰宅が遅かったユーザーに「他のみんなはもう帰宅してるよ」と声をかけたりする。

 こうしたあらゆる声かけに対し、他のユーザーがFriboの近くで2回ノックする音を発するとFriboはそれを感知し、元のアクションをしたユーザーに「今何してるの? 〇〇(ノックしたユーザー)が気になってるみたい」と話しかけ、3回拍手をすると、SNS上の「Like」のように反応を示せる。

 Friboは、人間の声の認識精度は低く、録音機能も非搭載。その代わり、先述のように生活音を聞き分けたり、超音波センサーや気温、湿度、光を感知するセンサーを使ったりして、ユーザーの行動や居場所を把握する。

fribo ネコのような耳を持つ愛らしい見た目のFribo(YouTubeより)

「脱・孤独」ビジネス、韓国だけでなく世界中で誕生

 Fribo開発の背景にあるのは、ミレニアル世代を中心とする若年層の一人暮らしの増加。帰宅後に孤独を感じている彼らが、同じ境遇にいる友人や家族ともっとコミュニケーションを取れるように、と開発された。

 若年層の一人暮らしが増加しているのは韓国だけではない。米国では2017年時点で、全人口の42%、35歳以下の若年層だけを見れば61%が一人暮らしであり、その割合は年々上昇傾向。日本でも、90年には全世帯の23.1%だった一人暮らし世帯の割合は、15年には34.5%にまで上昇している。

 人は孤独を感じると、身体的にも精神的にも病にかかるリスクが高くなるといわれる。近年は、単に一人暮らしの増加だけではなく、リモートワークやフリーランスなど新しい働き方が浸透してきたことも、人々が孤独を感じやすくなっている一因かもしれない。

 Friboのような「脱・孤独」ビジネスは、世界中で誕生している。例えば、自宅をオフィスとして解放してもいい人と、それを使いたい人とをマッチングするサービス「Hoffice」。13年にスウェーデンで始まり、現在はデンマークなど世界102都市で利用されている。

fribo 「Hoffice」、誰かと時間を決めて一緒に仕事をすることで自宅での作業効率が上がるという

 また、ノルウェーのスタートアップ「No Isolation」は、離れていても一緒に会議や授業に参加しているかのような臨場感を生み出すロボットを開発している。

 日本でも、パナソニックが離れた家族をつなぐコミュニケーションツール「Famileel」を開発。自宅に設置されたデバイスの側を通ると、遠く離れた家族の自宅にあるもう1つのデバイスが光り、電話やチャットをしなくても相手の気配を感じられるというもの。

fribo 「Famileel」。カメラやマイク機能も搭載、テレビと接続してテレビ電話も可能

プライバシーに対する考え方に文化が出る?

 先ほどのFriboに話を戻すと、同サービスではユーザーの行動は匿名で通知される。とはいえ、プライバシーの観点からすれば、自分の行動が逐一友人・家族に報告されるというのは、少し身の毛のよだつことかもしれない。

fribo Friboでは匿名でユーザーの行動が通知される

 しかし、Friboが開発された韓国では1カ月間のトライアルを終えた人々から、意外にも次のようなポジティブなフィードバックを寄せられたという。

「友人の行動を知らせてくれるので、テレビをつけるのとは違う」

「友人が何をしているか想像がつき、まるで同じ家の別の部屋で生活をしているみたい」

「朝、友人が身支度をしているのに気が付くと、自分も少し早く起きてみようかと思う」

 韓国では友人同士の物理的・精神的な距離感が、日本に比べて近いといわれる。そうしたお国柄も、Friboのようなつながりを感じられるロボットが誕生する背景にあるのだろう。

 実際、開発元の研究者は、「Friboが違った文化を持つ他の国でもポジティブに受け止められるのかは分からない」と話している。Friboは現在プロトタイプの作成段階であり、研究者たちは今後さらに長期のユーザーテストを実施し、改良を重ねていく予定だ。

 Friboは韓国ならではのアイデアかもしれないが、少なくとも人々の孤独を解消するサービスへのニーズが世界中で高まっていることは確か。今後、日本ならではの「脱・孤独」商品も生まれるかもしれない。

執筆:中井千尋

編集:岡徳之(Livit


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