「政府を頼れない」 海賊版サイト遮断、苦悩するISP業界団体(2/2 ページ)
JAIPAの野口理事は「通信の秘密が、ISPなど事業者の権利と誤解されている。ISPが『通信の秘密を盾にしている』というが、そもそも国民の権利だ』と強調する。「ISPなど事業者は、通信の秘密を守るという役目を国と約束してきた。今回のブロッキングは、そうした考えと相いれず、しかも“政府から言われた”もの。法への国民の信頼を裏切ることにならないかと心配している」(野口理事)
「年間二千数百万のコスト」
ISPが海賊版サイトへのブロッキングを行うとなれば、背負うものは法的リスクだけではない。既にISPによるブロッキングは、児童ポルノサイトを対象に行われているが、ICSAの丸橋理事は「(ICSAは)年間二千数百万のコストを掛けている」という。
丸橋理事によれば、児童ポルノサイトへのブロッキングの流れはこうだ。まず違法サイトの通報を受けるインターネット・ホットラインセンターからの情報に基づき、遮断するサイトのブラックリストを作成。ブロッキングする前に違法なコンテンツが削除されたサイトをリストから除外したりと細かい運用をしながら、週単位でリストを更新していくという。さらに第三者委員会が運用実態をチェックし、改善するという取り組みも行う。
NGN IPoE協議会の石田会長は「正しいリストをいかにリアルタイムに更新するかは、ISPにとって負担になる。リストを精緻に作っても、オーバーブロッキング(違法ではないサイトをブロッキングしてしまうこと)やブロッキング漏れが起きる可能性もある」と指摘する。一方、閲覧するユーザーには、ブロッキング対象のサイトにアクセスした場合に代わりの内容を表示する仕組みを用意し、つながらない理由の説明を求められた場合に対応するカスタマーサポートの体制を整える必要もある。
「こうしたアディショナルな費用は、ISPにとって地味にダメージになる。ISPのサービスは固定料金なので、ブロッキングに費用がかかっても売上が増えるわけではない。むしろ費用負担が増えるとき、事業者が判断の妥当性を株主へと説明できるかというと、その強靭さはないだろう」(石田会長)
JAIPAの野口理事は「ユーザーからすると、ISPが一括に何かを行うのは『権力がある』ように見える。自主的にISPがユーザーの通信に首を突っ込むのは難しいという気持ちを新たにした」と話す。「ブロッキングがより精緻になるほど、ユーザーから見ると気持ち悪いブロッキングの仕組みができ、ISPなどネットワークの中間者が信じられなくなる」と恐れている。
立石副理事は、緊急対策としてのブロッキングに限らず「立法にすら反対する」と主張。立石副理事によれば「ユーザーの過半数がサイトブロッキングに賛成している」とのアンケート調査結果もある。「ユーザーの多くが、通信の秘密という自分の権利が侵害されているとは思っていない、ブロッキングとは無関係と考えているからだ」(立石副理事)
野口理事は「SNSなどでは、運営がアカウントを凍結することがあるが、ISPはそう勝手にはブロッキングはできない。通信の秘密を理解してもらい、国民を巻き込んで問題への対策を議論するプロセスを生むことが重要」と訴えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
防衛省の「クーラー300台」投稿動画でビックカメラのトラックが注目を集める 同社「販売用の在庫を迅速に提供」
-
2
「文スト」スマホゲーム、きょう告知→あす終了 突然のサ終にユーザー混乱 運営元の廃業で
-
3
ドコモ、ahamoを30→40GBに増量 8月1日から 料金据え置きの新キャンペーン
-
4
「楽天ドライブ」アプリから「データ漏洩」「ハッキングした」通知? 運営元「緊急調査中」「通知を開かないで」
-
5
イオンモール熊本のドローン捜索、状況を現場キーマンに聞いた 撮影を阻んだのは……
-
6
“ダサい”不評の「ドコモの銀行」、従来のアプリアイコン選択可能に 「ご意見・ご要望も踏まえ」
-
7
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
8
光学25倍ズームのソニー「RX10 V」はもう“レンズ一体型α” 1台で何でも撮れそうな万能感に浸れるぞ
-
9
“脳のゴミ”は鼻から捨てられていた? 老化で詰まる排出路、薬を鼻から投与で改善 韓国主導チーム研究
-
10
タムロン、ソニーからの買収提案認める 特別委員会を設置して検討
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR