――国内のコミック市場全体(電子書籍含む)が4000億円前後で推移している中、「漫画村による被害額が3000億円」との計算は過大ではないか。
CODAが算定したのは、出版事業者の逸失利益ではない。単純に「海賊版がどれぐらい流通しているか」の額であり、この数字を出す場では、必ず「流通額ベースの試算」と説明している。DVDなど物理メディアと違い、オンラインの著作権侵害で、被害額を出すのは非常に難しい。とはいえ、「『3サイトは日本のコンテンツが多く、日本から大量にアクセスされている』という説明だけでは分かりにくいので、数字を出してほしい」という話もあったので、批判を受けることも前提で、この数字を「被害額」として発表した。
――ブロッキングという手段を採る前に、やれることがほかにもあったのでは、という指摘もある。例えば、海賊版サイトのURLが検索結果に出ないよう、DMCA(米デジタルミレニアム著作権法)に基づく削除依頼をGoogleに行ったり、Cloudflareに対して、海賊版コンテンツの削除依頼を行ったりはしているのか?
もちろん行っている。CODAは、DMCAに基づく削除申請を簡易・大量にGoogleに申請できる「Trusted Copyright Removal Program for Web Search」(TCRP)のパートナーになっている。2017年7月〜2018年1月の期間で、4万3465URLの削除依頼が承認され、1448URLが拒否された。拒否されたURLは、Google確認時にはすでに削除されていたものであり、申請は基本的に承認される傾向にある。
Cloudflareへの削除申請も行っているが、Cloudflareは、削除依頼を無視する。
――Cloudflareに対して、訴訟は行わないのか。
司法手続きは時間もかかるため、まだ行っていない。
――海賊版サイトに配信される広告を止めることで、海賊版サイトが利益を上げられなくするという手段もある。
CODAは16年から知財本部の会合で、海賊版サイトに掲載されるオンライン広告への対応も求めてきた。当初は「オンライン広告はこれからのビジネスだから伸ばすべきだ」との主張が強く、著作権侵害対策のために広告を止めるという提案にはすごく抵抗があったが、「漫画村」問題で、流れが変わってきた。
違法サイトへの広告配信を止めるべく、今年2月、ネット広告事業者の団体・日本インタラクティブ広告協会(JIAA)に著作権侵害サイトのブラックリストを渡し、会員社で共有してもらっている。まだ始まったばかりで、効果を検証できるのはこれからだ。ただ、オンライン広告は仕組みが複雑で対策も難しい。広告主や代理店でも、出稿した広告がどのサイトに出ているか分からないこともある。
対策については英国が進んでいる。権利侵害サイトのブラックリストを、権利者と警察で作成し、広告主と共有している。権利侵害サイトには大手広告主の広告が載らなくなるため、侵害サイトの収入が減る。日本も英国に遅れたが、ブラックリストのやりとりがやっとできたところだ。
海賊版から得られる利益を止める取り組みとしては、海賊版有料販売サイトの決済口座を凍結するといったことも行っている。
――ブロッキングが行われる前に、指定された3サイトとも、サイトごと消えたり、違法コンテンツを日本から利用できなくしたため、現状、権利侵害がなくなっている。
「日本政府公認の“黒サイト”」だと、政府が認めてくれた効果だろう。
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