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同じ画像なのに違う絵が見える 不思議な「スーパーハイブリッド画像」とは?コンピュータで“錯視”の謎に迫る(3/3 ページ)

» 2018年05月23日 08時00分 公開
[新井仁之ITmedia]
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photo 図4 新型スーパーハイブリッド画像(新井仁之・新井しのぶ、2018)

 これは、遠くから「ようこそ」が見え、近くでは「ようこそ 数理で探る」が見え、そしてさらに近づくと「ようこそ 数理で探る 錯視の世界へ」になるというものです。画像の前で移動している模擬体験ができるように、先ほどと同じく画像の方を拡大・縮小してみます。

photo 図5
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デモ用の動画も用意しましたのでご覧ください

 これは従来のハイブリッド画像とも、また先にご紹介した筆者らのスーパーハイブリッド画像とも異なり、一度現れた文字は消えずに鮮明に見え続け、さらに文字がマージされた背景もきれいに保たれたままになっています。

 新型スーパーハイブリッド画像は本連載の第3回第4回で「浮遊錯視」を作る際にも使った新しいタイプのフィルター群「かざぐるまフレームレット」(新井・新井)を使っています(注2)。

スーパーハイブリッド年賀状

 ハイブリッド画像、スーパーハイブリッド画像の用途ですが、もちろん見て楽しむということがあります。その他、視覚の特性を調べるのにも使えるでしょう。実用的なところでは、オリバ氏らがハイブリッド画像について参考文献[2]で指摘しているように、大きな錯視看板を作れば宣伝効果があがるかもしれません。ここではスーパーハイブリッド画像を使って14年に作成した年賀状の一例を紹介します。

photo 図6

 ハガキを遠くから見ると2014年のえと「午」、やや近づけて見ると「2014」、さらに近づけると紅梅の図柄が見えてくるというものです。

(注1)スーパーハイブリッド画像、ハイブリッド画像の見え方は、画像の表示サイズのほか、見る人の視力にも依存します。

(注2)このフィルターを使うと、ハイブリッド画像もスーパーハイブリッド画像も作ることができます。本稿に掲載のスーパーハイブリッド画像、ハイブリッド画像は、実際このかざぐるまフレームレットを使っています。

参考文献

[1] A. Oliva, A. Torralba, P.G. Schyns, Hybrid images, 2006 Transactions on Graphics, ACM Siggraph, 25-3, 527-530.

http://cvcl.mit.edu/publications/OlivaTorralb_Hybrid_Siggraph06.pdf

[2] A. Oliva, A. Torralba, P.G. Schyns , 2006 Siggraph Presentation Slides

http://cvcl.mit.edu/publications/Talk_Hybrid_Siggraph06.pdf

[3] 新井仁之、新井しのぶ、数学による新しい表現方法 スーパーハイブリッド・アート

http://www.araiweb.matrix.jp/Exhibition/FromHybridToSuperHybrid.html

photo

著者:新井仁之(あらい ひとし)

早稲田大学 教育・総合科学学術院・教授、理学博士。

横浜市生まれ。早稲田大学、東北大学、東京大学を経て現職。

視覚と錯視の数学的新理論の研究により、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞、1997年には複素解析と調和解析の研究で日本数学会賞春季賞を受賞。


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