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「テクノロジーが世界展開の武器に」 上場のメルカリ、山田CEOが描く未来図

» 2018年06月19日 19時41分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 「日本を代表するテックカンパニーになる」――6月19日に東証マザーズに新規上場したメルカリの山田進太郎会長兼CEOは、同日開いた記者会見で、そのように繰り返した。日本のフリマアプリ市場をけん引するユニコーン企業(企業評価額が10億ドル超の非上場ベンチャー)が世界へはばたく過程で、山田CEOはAI(人工知能)など「テクノロジーが世界展開の武器になる」と強調する。

photo メルカリの山田進太郎会長兼CEO

優位性を保つために「テクノロジーが鍵になる」

 上場初日の終値は5300円と公開価格(3000円)を76%上回り、時価総額は約7172億円とマザーズ市場でトップ。これほどの期待を集め“世界を目指す”メルカリの今後の成長戦略として、山田CEOは「優位性を保つ鍵はテクノロジー」と話す。

 同社はこれまでも、AI(人工知能)を活用して利用規約に違反する出品を自動検知する技術を開発。豊富な商品情報や取引データを生かし、精度の向上に努めてきた。山田CEOは「こうした技術は他社が容易に追い付けるものではない。表面上は同じサービスを作れても裏側は異なる」と自信を見せる。

 さらに、2017年12月には研究開発組織「mercari R4D」を設立。シャープ、東京大学などと共同で、AI、ブロックチェーン、VR/AR(仮想現実/拡張現実)など最新技術の研究開発とサービス化を目指している。

 「スマートフォンが全くなくなるわけではないが、VR/ARは“次のデバイス”に使われる技術と思っており、ショッピングの在り方が変わる可能性もある。そうした技術の動向をトラッキングしている段階だ」(山田CEO)

国内成長は「メルペイ」に期待

 同社の主力であるフリマアプリ「メルカリ」は、日本国内では累計ダウンロード数が日本国内で約7100万(18年3月時点)、流通総額は日本国内が約3180億円(直近の4四半期分、17年4月〜18年3月分の合計)。流通総額の成長率は年率58.8%と、右肩上がりの成長を見せてきた。

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photo メルカリの小泉文明社長兼COO(最高執行責任者)

 ただ、同社の小泉文明社長兼COO(最高執行責任者)は「ユーザーは、20〜30代の若者が中心。今後は40〜50代の認知拡大・利用促進を図る」と説明する。衣料品の出品が多く、家電製品やスポーツ用品など「出品のハードルがまだまだ高いものもあるが、アプリの利便性を向上させながら、取引数を増やす」(小泉COO)

 メルカリのさらなる活性化を目指し、エコシステム構築を掲げた同社。その中心に据えるのは、17年11月に設立した決済・金融事業の新会社「メルペイ」だ。いずれはメルカリの取引で得た金銭やポイント、ユーザー相互の評価などを、金融商品の購入やメルカリ外のサービスとの連携にも活用するという。「日々の生活でもっとメルカリが使われるようにすれば、流通総額全体が増える」(小泉COO)

海外展開は、認知拡大の段階

 一方、メルカリの“海外進出の第一歩”といえる米国では、累計ダウンロード数が約3700万(18年3月時点)に対し、流通総額は約180億円(直近の4四半期分)にとどまる。山田CEOは「赤字は大きいが、見込みがあるので規律をもって投資をしたい」と述べた。

photo 米Mercariのジョン・ラーゲリンCEO

 米Mercariのかじ取りを担うジョン・ラーゲリンCEOは、Facebookの元幹部。ラーゲリンCEOは、同職に就任した17年6月時点では「米国全土ではまだ認知度が低かった」と振り返る。米国では衣服のフリマサービス「Poshmark」など、競合がひしめく。「シリコンバレー発の企業に負けないように、この1年間はチームの構築に力を入れてきた」という。

 そうした準備期間を経て、18年3月に米国では、アプリロゴのデザイン変更を含む「Mercari」のリブランディングを実施。ユーザーへのヒアリング調査などを経て、ローカライズを進めている。今後は、テレビCM以外にも、競合他社が取り組んでいない広告も生かし、認知拡大に努めていく。

 山田CEOは「まだ米国の人々の心をつかめるほどマーケットを理解できていないが、そうした部分はヒトでカバーできる」とし、人材獲得を含め、投資する考えを示した。

 「米国、中国などは(テクノロジーカンパニーが多く)一歩進んでいると思うが、それは巨大なマーケットが米国、中国にはあり、高い収益が研究開発に使われているためだ。メルカリも米国、それ以外の地域で高い収益源を確保できれば、これから研究開発により投資できる」(山田CEO)

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