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「口コミで戦うしかなかった」 「カメラを止めるな!」上田監督の“SNS戦術”(1/3 ページ)

» 2018年08月31日 08時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 「僕らには宣伝費がなかったので、口コミで戦うしかなかった」――異例のヒットを記録している映画「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督はそう話す。制作費300万円という同作が、日本を熱狂させている。6月に都内の映画館2館で上映が始まると、その面白さがネット上で広まり、8月末現在、累計上映館数は220館以上に拡大した。

photo 「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督

「宣伝もエンターテインメントだと思っている」

 カメラを止めるな!は、とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していたところ、本物のゾンビに襲われる――というストーリー。映画監督や俳優の専門学校「ENBUゼミナール」の企画から生まれた作品だ。制作費の約半分は、クラウドファンディングを利用して集め、オーディションで選んだ“無名”の俳優を起用した。

 だが昨年11月、初披露となった先行上映が話題に。口コミが広がり、再演を望む声が殺到したため、劇場公開に踏み切った。上田監督は「劇場公開前は、映画監督や映画評論家の間で話題になったが、公開後は一般の方に加え、お笑い芸人、アイドルなど著名な方々がネット上で発信してくれて、普段映画を見ない人も巻き込んだ」と分析する。

 上田監督は「宣伝費を掛けずに勝つとしたら個人の発信に頼るしかない」と話す。「インディーズ映画なので、テレビCMといった(大々的な)宣伝はできない。口コミを利用したり、Twitterで情報を発信したりするしかなかった」

photo (c)ENBUゼミナール

 ただ、口コミが広まるのを待つのではなく、監督側も積極的に情報を発信した。「キャストの半分くらいはTwitterをしていなかったが、始めてもらった。『リツイートって何?』というところから教えて、今はほぼ全員がTwitterで発信している」

 キャストがTwitter上で自分の名前を検索(エゴサーチ)し、映画を見た人の感想に「ありがとうございます」と返事をしたり、「いいね!」を付けたり――。上田監督は「無名のキャストだからこそできた。メジャー映画ではできない」と説明する。

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