YouTubeのような動画投稿サイトのスクリーンショットについて、深澤さんは「元のコンテンツが適法であれば画像を保存するのは問題ない。元のコンテンツが作者から見てまずい違法なものの場合、改正案では違法」と説明する。
ただし、現行法では判断が難しい。「現行法では録画が禁止されているが、1枚の画像(スクショ)で録画と言っていいのか。それは撮影に近いのではないか。私はどちらかといえば合法な方向に働くのではないかなと思っている」(深澤さん)
スマホやPCに保存された画像を、警察はどうやって知ることになるのか。深澤さんは「刑事事件でよくあるのは、泥棒など他の目立つ事件で捕まった人が家宅捜索を受け、調べたら違法なものが出てくるというケース。今回の場合は、配信元の違法サイトの運営者が捕まり、そのサイトのアクセスログから利用者を片っ端から捕まえるという可能性はある」と説明する。
ただし、基本的に逮捕までいくのは罪が十分重くて放っておくと証拠隠滅をされそうな場合がほとんどなので、軽い罪では逮捕までいかないケースもあると見ているという。
赤松さんは「創作活動の参考に著作権がよく分からないものもPCに保存する」と話すが、こうした行為をやめるべきかどうか尋ねた。これに対し、深澤さんは「著作権的にあまり怪しそうなものを次から次へダウンロードするような行為はともかく、あまり萎縮しなくてもよいのでは」と答えた。
また、既にPCやスマホに保存してある著作権的に問題があるかもしれない画像についても、わざわざ消去する必要はないという。「今回の改正案では、違法なものを所持している事実ではなく、ダウンロードという行為が違法になる。刑事罰は後付けできないと憲法で決まっているので、さかのぼって適用される心配もない」(深澤さん)
違法にアップロードされたと知りながらそのコンテンツをスクリーンショットし、「しまった」と思ってその画像を消したときは証拠隠滅になるのか。深澤さんは「証拠隠滅といえる。法律上罪にはならないが、証拠隠滅という評価はされるだろう」と説明した。
メディアが報道のために海賊版サイトのスクリーンショットを撮って、番組や記事内で使用する場合などはどうか。
このケースでは、著作権法で定める「引用」の要件を満たしていると考えられるが、違法にはならないのだろうか。
深澤さんは「引用の要件を満たしていればそれは適法なので、適法なものを保存するのは適法」ときっぱり答えた。
著作権法では、引用の条件として「公正な慣行に合致」することと、「引用の目的上正当な範囲内」であることが明記されている。これらの条件を満たせば、著作権者の了解なしに著作物を利用できる。
赤松さんは、「政府や出版社がわれわれ漫画家を守ろうとしていることはうれしいが、そのために国民生活にかなり影響のあることをやろうとしているのは問題がある。私自身も創作活動のための資料収集で不利益が生じてしまうし、クリエイターが萎縮してしまうのは良くない」と話す。
赤松さんは、深澤さんに「全部犯罪です」と指摘された二次創作についても言及し、「プロの作家はコミケ出身者がすごく多い。TPPでの著作権侵害の非親告罪化の議論のときも、出版社と作者は『コミケは創作のゆりかごである』と守る方針だった。それをたたくと、商業漫画も含め、業界が萎縮してパワーが落ちてしまう」と思いを語った。
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