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Google Drive、OneDrive、Box、Dropbox――進化を続ける4大クラウドストレージの機能を徹底解説(2/2 ページ)

» 2020年02月19日 07時05分 公開
[谷川耕一ITmedia]
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Dropboxでは1つのツールの中でコンテンツ管理を集約し共同作業をしやすくする

 独立系でクラウドストレージに特化しているDropboxは、一般消費者向けに無料サービス枠を設け、他のユーザーを紹介すると利用容量が増える仕組みで大きく認知とシェアを広げた。世界中に広がった顧客ベースを基に、より多くの容量を必要とするユーザーを有料版へ誘導し、最近ではビジネスユーザー向けサービスや機能を拡充して企業向け市場を開拓している。

 Dropboxが注力しているのが、日々業務で利用するコンテンツ管理をDropboxに集約し、チーム作業のコラボレーションを活性化する「スマート ワークスペース」のコンセプトだ。現状、メールやチャットなどさまざまな方法でコミュニケーションをとるようになり、結果デジタル空間にコンテンツが散在し必要なものを探すのにも手間と時間がかかっている。

 それに対しDropboxでは、2019年9月から新たなユーザーインタフェース「Dropbox Spaces」を提供し、散在するコンテンツを整理された状態で集約しやすくした。Dropbox Spacesでコンテンツ管理を集約し、さらに共同編集機能の「Dropbox Paper」で集約されたコンテンツの共同編集を容易にする。これらがDropboxの1つのツールで完結しているのが特徴になっている。

 Dropbox Paperの共同編集機能は、ともすればOneDriveやGoogle Driveと競合する。しかしDropboxでは、むしろMicrosoftやGoogleと積極的に協業する方針をとる。特にOffice製品との連携には力を入れており、あらゆるバージョンのOfficeを利用する共同作業を容易にする「Dropbox バッジ」機能も新たに追加している。Dropbox バッジでは、Officeツールを立ち上げるとDropboxアイコンが表示され、クリックするだけでファイル共有時の閲覧や編集状況をすぐに把握できるようになり、利用者の排他制御も可能となる。

 Dropboxの優位性としては差分同期、LAN同期、ストリーミング同期機能により、同期速度が速いことが挙げられる。また大容量ファイル、大量のファイルが扱え全文検索機能があること、さまざまなファイルタイプのプレビュー機能もユーザーからは評価が高いようだ。非機能面ではコンシューマー向けに普及したことでITリテラシーがそれほど高くない人でも利用のハードルが低く、それが企業導入後の利用率の高さに貢献しているとも言われている。

photo SlackとDropboxの連携

Boxはセキュリティとワークフローがビルトインされている

 Boxは、エンタープライズ向けのクラウドコンテンツ管理プラットフォームを目指しており、早い段階からエンタープライズ向け市場に注力している。特徴は、クラウドストレージにワークフローとセキュリティ機能がビルトインされていることだ。

 Boxでは社外とコンテンツ共有する際に、管理者などに頼まずにユーザーが容易に設定できる。安全な共有のためのさまざまな工夫があり、例えば外部との共有があるフォルダが一目瞭然で、SMSを使った二要素認証もいち早く取り入れている。他のクラウドストレージが2、3段階しかないアクセス権限も、Box独自に7段階とかなり細く設定可能だ。Box上のドキュメントに電子透かしを入れることで、撮影による不正コピーの抑止機能などもある。

 新たなビルトインされたセキュリティ機能が、Box Shieldだ。Box Shieldにはデータ漏えいを防ぐ「Smart Access」と、脅威を自動検出する「Threat Detection」の2つがある。Smart Accessは、コンテンツのファイルにラベルを付けて分類し、分類ごとにセキュリティポリシーに沿ったアクセスコントロールを実現する。アクセスの抑止だけでなく、ファイルは開けるが編集できないなど細かい制御が可能だ。

photo Box Shieldの仕組み

 Threat Detectionは、ユーザーのコンテンツ利用状況を機械学習し、コンテンツに対する異常な利用行動を自動で検出する。数日間学習すれば「普通の状況」が明らかになり、以降は普段と異なる場所からのアクセスや不正なデータの持ち出しにつながるダウンロードなどを自動で検出し制御できる。

 Boxのもう1つの特徴は、Salesforce.comやServiceNow、Workday、さらにはSlackやZoom、DocuSignなど多くのSaaSと連携していることだ。連携APIを提供するだけでなく、ベンダーとは開発レベルの深い協業関係を築いている。他にもAdobeやOracleなど、エンタープライズ向けソフトウェアベンダーとの協業も昨年明らかにした。積極的な外部サービスとの深い連携は、Boxの企業向けサービスとしての重要な戦略となっている。

複数サービスの組み合わせが業務効率化のカギ

 既にクラウドストレージのサービスは、クラウド上にストレージ領域を確保し安全にファイルを保存、共有できるだけではない。日常業務の中でコミュニケーションやコラボレーションを活性化させる環境の核となっている。そのためにはクラウドストレージとしての機能を拡充するだけでなく、他のアプリケーションとのシームレスな連携は今後さらに重要となるだろう。

 ユーザーは排他的にクラウドストレージを選択するのではなく、複数サービスをうまく組みあわせ、効率的に共同作業ができる環境を手に入れるとよいだろう。

 2019年にはクラウドストレージのサービスでも、比較的大規模な障害が発生した。クラウドストレージが日常業務の中で手放せないツールとなっており、クラウドストレージのバックアップ/リカバリーについても今後は十分に備えておく必要もありそうだ。

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