再生可能エネルギーの発電量、7月からの買取制度で2012年度に13%増加へ法制度・規制

太陽光や風力などによる再生可能エネルギーの「固定価格買取制度」が7月1日から始まる。すでに発電方法別の価格案も決まり、大企業を中心に再生可能エネルギーへの取り組みが加速してきた。制度開始を目前に控え、その概要をまとめてみた。

» 2012年06月07日 12時20分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「固定価格買取制度」の導入準備を進めている経済産業省の資源エネルギー庁は6月1日に、制度の詳細に対するパブリックコメントの募集を終了した。これにより最終案を確定して、7月1日から新制度を開始する予定だ。細かな点の修正はあるものの、基本的な内容は現行案のまま決定するものとみられる。

 資源エネルギー庁がパブリックコメント募集のために作成した説明資料をもとに、基本事項を改めて整理してみよう。まず5種類の発電方法によって買取価格や買取期間が決められている(図1)。「太陽光」「風力」「地熱」「中小水力」「バイオマス」の5種類で、それぞれ発電能力の大きさ、バイオマスの場合は燃料によって細分化される。

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ALT 図1 発電方法(電源)別に定められた買取価格。出典:資源エネルギー庁

 個々の買取価格は発電設備に必要な標準的な建設費と運転維持費をもとに収益率(IRRと呼ぶ)を算出し、それをベースに決められた。最も価格が高いのは20kW未満の小型風力で1kWhあたり57.75円である。電力会社が家庭向けに販売している通常の単価の2倍強に相当する。

 実際の買取量が最も多いと予想される太陽光も42円と高く設定されている。このところ企業と家庭の双方で太陽光発電の導入が活発になっている大きな要因だ。一方、価格が安いのはバイオマス燃料で、特にリサイクル木材を活用した場合は13.65円と太陽光の3分の1以下の価格になっている。発電設備の費用は太陽光と同程度だが、バイオマス燃料は資源が限られることもあり、急速な拡大を抑えるための措置と考えられる。

 5種類の発電方法それぞれに対して、制度の適用を受けるための条件がある(図2)。例えば太陽光発電の場合は、住宅用を中心とする発電能力の小さい10kW未満の設備に関してJIS(日本工業規格)の基準による認証が必要になる。さらに発電能力の大きい設備を含めて、太陽光パネルのエネルギー変換効率が種類別に決められており、導入前に確認しておかなくてはならない。

ALT 図2 発電方法別の主な条件

 資源エネルギー庁は固定価格買取制度によって、再生可能エネルギーを導入する企業や家庭が大幅に増えるとみており、2012年度は前年度と比べて発電量で約13%増えると予測している(図3)。特に増加するのが太陽光発電で、住宅用と非住宅用を合わせると4割以上の伸びを見込んでいる。

ALT 図3 再生可能エネルギーによる発電量と買取量の年間見込み。出典:資源エネルギー庁

 現在のところ日本の電力のうち、水力を除く再生可能エネルギーの発電量は1%程度に過ぎないが、固定価格買取制度を追い風に、比率が急速に高まっていく期待は大きい。ただし電力会社が高い価格で買い取ることになるため、通常の電気料金の値上げ要因になってしまう状況は避けられないだろう。その点を企業も家庭も納得したうえで、国を挙げて再生可能エネルギーの拡大に取り組む必要がある。

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