2030年に再生可能エネルギーを25〜35%へ、発電コストは1.8倍に上昇法制度・規制

我が国のエネルギー供給体制の将来計画を策定する政府の「エネルギー・環境会議」が2030年に向けたシナリオを3つのパターンで提示した。いずれのシナリオも再生可能エネルギーの比率を大幅に高める内容だが、同時に発電コストが上昇することも指摘している。

» 2012年07月04日 07時30分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 まさに日本におけるエネルギー問題の今後を左右する分岐点を迎えている。内閣の国家戦略室が主宰する「エネルギー・環境会議」が基本計画を策定中で、その素案が先ごろ提示された。特に重要な点は電力の構成比をどう変えていくかのシナリオにあり、原子力発電の比率によって3つの案が用意されている(図1)。おそらく国民の支持を最も多く集めるのは、原子力発電の比率をゼロにする「ゼロシナリオ」だろう。

ALT 図1 2030年における電力の構成比に対する3つのシナリオ。出典:エネルギー・環境会議

 ゼロシナリオでは、再生可能エネルギーを35%まで高める一方で、地球温暖化に影響を与える化石燃料の比率を現在と変わらない65%に維持する必要がある。原子力の危険性と温暖化の弊害のどちらを選択すべきか、判断が難しいところだが、化石燃料の利用効率を改善する方法もいろいろと出てきている。温暖化への影響を最小限に抑えながらゼロシナリオを推進することが妥当な選択肢と考えられる。

 もうひとつゼロシナリオで指摘されているのがコストの問題である。再生可能エネルギーの比率を35%まで高めるためには、追加の対策として電力を送配電するための系統を強化する必要があり、このためのコストが大きく増えてしまう。

 さらに発電に必要なコストも高くなる。エネルギー・環境会議の試算によると、ゼロシナリオの場合の発電コストは1kWhあたり15.1円になり、2010年時点の8.6円と比べて約1.8倍に上昇する。ほかの2つのシナリオでも再生可能エネルギーを増やすために発電コストは14.1円まで上昇する見込みだ。いずれにしても国民の負担増は避けられない。

 政府は今後のエネルギー政策の基本方針として、次の5つを掲げている。

1.省エネルギーを進め、エネルギー消費量と電力消費量を減らす。

2.原発依存度を減らす。

3.化石燃料依存度を減らす。

4.再生可能エネルギーを最大限引き上げる。

5.以上により非化石電源の比率を上げ、CO2 排出量を削減する。

 こうした基本方針をもとに策定した3つのシナリオに対して、国民の意見を集約するために討論型の世論調査などを実施したうえで、8月中に計画の大枠を決める予定だ。政府が民意を反映した手続きを正しくとる限り、ゼロシナリオが採択されて、2030年に向けたエネルギー改革が進められていくことになるはずである。

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