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» 2012年08月09日 07時20分 UPDATE

中堅・中小企業のための本当に効く節電対策(3):電力の見える化で攻めの節電対策を

前回は電力使用量の削減に直接的な効果のあるLEDなどの最新機器について解説した。最終回となる今回は、さまざまな機器の電力使用量を計測・集計して継続的な節電対策を可能にする「電力の見える化」の実現方法を紹介する。

[早川憲一/大塚商会,スマートジャパン]

連載(1):「基本料金と電力量料金の両方を削減する」

連載(2):「LED照明などの最新機器をうまく活用する」

 まずは「電力の見える化」とは何か、を定義しておきたい。オフィスや工場のどの場所で、どれだけの電力が使われているか、を明らかにすることが見える化の目的である。

 照明や空調にどれだけの電力が使われているかを測定し、さらにはフロアーごとや部署ごとに電力の利用状況を把握することが基本的な役割になる。そもそも電力の利用状況を把握していないで、節電対策用の機器だけを導入しても、それが本当に効果的かどうかは判断できないはずだ。

 前回に解説したように、LED照明は節電対策として非常に有効である。ただし、あまり使われていない会議室や応接室などに導入しても、さほどの効果は得られない。電力の利用状況を把握していれば、利用頻度の多い部屋の照明だけを入れ替えることも可能になる。

見える化を簡単に実現できるスマートコンセント

 最近まで電力の利用状況を把握するためのシステムは企業の間で広がってこなかった。その理由のひとつは導入コストの問題だ。従来はBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)と呼ばれる大規模ビル向けのシステムを使わなければ電力を見える化することができず、専用のコンピュータや機器を導入する必要があった。しかしここ最近の節電ブームに乗って、安価に導入できる電力の見える化システムがいろいろと登場してきた。

 安い導入コストで電力の見える化を実現できるものとしては、スマートコンセントがある。これを使えば機器の電力使用量を簡単に計測できる。コンセントと機器の間に挟み込み、無線を利用してパソコンにデータを送信する仕組みだ(図1)。新たにLAN(ローカルエリアネットワーク)を設置したり電気工事をしたりする必要はなく、購入したその日から電力を見える化することが可能だ。

 図1 スマートコンセントを使った電力見える化システム

 一方でBEMSも進化してきた。以前のBEMSはビルの設備担当者が利用することを前提に作られており、一般の人が電力の利用状況を把握することは難しかった。しかし最近のBEMSはWindowsパソコンから総務部門の担当者が簡単に操作できるように設計されている。アウトプットもグラフィカルになり、そのまま報告書としても利用できるレベルになっている(図2)。

 図2 電力使用量などを集計・分析したグラフの例

 システム自体もクラウドを使って構築できるようになり、以前は数千万円もしていたシステムが、いまや月額の費用が数万円で済むようになった。中堅・中小企業の多くが導入を検討できる価格帯に入ってきたのではないだろうか。

BEMSは段階的に進化させることが重要

 電力の見える化まで実現できたら、もう少し踏み込んだ節電対策を進めたいところだ。電力の利用状況が分かるようになると、経営者としては当然ながら、電力の無駄を発見する、そして無駄を排除したい、と考えるのが常だろう。

 使っていない会議室の電気がつけっぱなしになっている。そういったことも電力の見える化によって分かる。BEMSがあれば電力の無駄を解消することも可能だ。例えば人感センサーと自動ON/OFFが可能な装置を組み合わせると、会議室に人がいなくなった時点で照明を自動的に消すことができる(図3)。

 図3 BEMSと人感センサーにより照明を自動制御

 節電効果のある機器の導入から始めて、次に電力を見える化して節電効果を継続的に把握し、さらにはBEMSや自動制御装置を組み合わせて電力の無駄を省いていく。導入コストと効果を見ながら、段階的に節電対策を進めていくことが、中堅・中小企業にとっては重要である。

 最近は「オープンBEMS」という考え方がある。かつて中堅・中小企業の情報システムがオフコン主体からパソコンを使ったネットワーク型へ変化したのと同様に、BEMSも閉じたシステムからオープンなネットワークへ移りつつある。離れた場所にあるさまざまな装置とBEMSがつながり、さらに地域のエネルギー管理システムとも連携する。そういう時代が目前に迫っている。

 3回にわたって、中堅・中小企業を対象にした節電対策について解説してきた。現在の状況から考えて、日本の電力を取り巻く数多くの問題がすぐに解決するとは思えない。そうした状況にあって、個々の企業が節電の意識を強く持つとともに、電力コストの削減に努めることがますます重要になっていく。この連載が少しでもお役にたてば幸いである。

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