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» 2012年11月15日 09時00分 UPDATE

日本列島エネルギー改造計画(14)神奈川:太陽光発電を全方位に、メガソーラーの誘致から屋根貸しまで

首都圏では埼玉が太陽光発電の実績でリードしているが、その後を神奈川が追い上げている。国内最大のメガソーラーが県内にあり、県の施設を発電事業者に提供する「屋根貸し」でも先行する。再生可能エネルギー分野の企業誘致では実績が豊富で、国内最大のバイオマス発電所も稼働中だ。

[石田雅也,スマートジャパン]

 東京湾をはさんで千葉県とともに大規模な火力発電所を抱える神奈川県だが、2012年に入ってから太陽光発電の導入事例を急速に増やしている。「かながわスマートエネルギー構想」のもと、県が中心になって再生可能エネルギーによる発電事業を積極的に推進中である。

ranking_kanagawa.jpg 図1 神奈川県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 この構想の最終目標は県内の電力消費量のうち、再生可能エネルギーが占める割合を2009年度の2%から2020年度に16%へ高めることである。これまでは小水力発電が最も多かったが(図1)、今後は太陽光発電を飛躍的に拡大する計画だ。

 その目標達成に向けて矢継ぎ早に導入拡大策を展開している。施策の1つは2011年12月から開始した「ソーラーバンクシステム」と呼ぶ制度。企業や家庭が太陽光発電システムを導入しやすいように、太陽光パネルメーカーや施工業者による設置プランの中から神奈川県が推奨するプランを選定する。このシステムで導入事例を増やしている。

 もう1つの取り組みが、県が所有する施設を使った「屋根貸し」方式の太陽光発電事業だ(図2)。県立高校を中心に面積の広い施設の屋根を発電事業者に長期に貸し出して、太陽光パネルを設置する。発電事業者は固定価格買取制度を使って売電収入を得る一方、神奈川県は屋根の使用料を徴収する仕組みである。

yanekashi.jpg 図2 「屋根貸し」方式による太陽光発電の事業モデル。出典:神奈川県環境農政局

 すでに25か所の施設で発電事業者が決まっており、さらに対象施設を増やす計画が進んでいる。同様に民間の施設の屋根も貸し出せるように、発電事業者と結び付けるマッチング事業を実施中だ。

 大規模なメガソーラーの誘致にも力を入れて取り組んでいる。現時点で国内最大のメガソーラーである東京電力の「扇島太陽光発電所」が2011年12月に川崎市の東京湾岸で運転を開始した。隣接する地域には「浮島太陽光発電所」が同年8月から稼働しており、2つを合わせると発電能力は20MW(メガワット)にのぼる。さらに県内に残されている廃棄物の最終処理場や岩石の採取場など12か所の適した土地を選定して、発電事業者を公募中だ。

 こうした施策によって、県内の太陽光発電システムの設備規模は2010年度から2011年度に5割以上も増加した(図3)。新たな取り組みが実績を上げ始める2012年度以降も導入量が拡大していくことは確実である。

kanagawa_solar.jpg 図3 神奈川県の太陽光発電システムの設備規模(累積)。出典:神奈川県環境農政局

 さらに県みずからでもメガソーラーを建設するプロジェクトがある。山間部の愛川町と津久井町にメガソーラーと水力発電所で構成する「あいかわ・つくい次世代エネルギーパーク」の整備が進められている(図4)。新しいメガソーラーは2013年4月から、1.9MWの規模で運転を開始する予定だ。

aikawa_tsukui.jpg 図4 「あいかわ・つくい次世代エネルギーパーク」。出典:神奈川県環境農政局

 太陽光発電のほかにバイオマス発電でも大規模な設備が神奈川県内にある。2011年2月から稼働している「川崎バイオマス発電所」(図5)である。使用済みの木材などを使った木質バイオマスによる発電方式で、メガソーラーを大幅に上回る33MWの電力を作り出すことができる。バイオマス専用の発電設備としては国内最大の規模を誇る。

kawasaki_biomas.jpg 図5 川崎バイオマス発電所。出典:川崎バイオマス発電

 バイオマス発電の原材料になるのは、建設現場などで発生する再利用しにくい木材だ。これを関東地方の各地域から集めて、燃えやすい木質チップにしたうえで発電用の燃料に使う。川崎バイオマス発電所では年間に18万トンにのぼる木質チップを処理することができる。

 このバイオマス発電所は扇島太陽光発電所や浮島太陽光発電所からは目と鼻の先にある。旧来型の火力発電所や製鉄所などが集まる臨海工業地帯の一角で、広大な土地と水陸の輸送網を生かした再生可能エネルギーの拡大計画が着々と進んでいる。

2014年版(14)神奈川:「水素とバイオマスで一歩先へ、化石燃料を使わない電力源を地域に広げる」

2013年版(14)神奈川:「太陽光発電が毎年2倍に増える、再エネ率20%へ小水力にも挑む」

*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −関東・甲信越編−Part II」をダウンロードへ

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