水利権取得の必要がない下水処理水を利用して小水力発電自然エネルギー

富山県は下水処理施設に小水力発電施設を設置した。処理済みの水を川に流す前に小水力発電に利用する考えだ。

» 2013年02月07日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 富山県が小水力発電施設を設置したのは「二上浄化センター(富山県高岡市二上)」(図1)。小矢部川流域の下水を処理している。

図1 二上浄化センターの全景。出典:財団法人 富山県下水道公社

 設置した小水力発電設備の最大出力は10kWで、年間発電量はおよそ8万kWhに達する見込み。発電機には「投げ込み式水車型マイクロ水力発電機」を利用した。縦型の筒のような形をしており上から水を投げ込めば、下にある水車が回って発電する(図1)。

図2 投げ込み式水車型マイクロ水力発電機と、水の流れ。出典:富山県

 従来は処理済みの水を小矢部川に流していたが、小矢部川に流す前に、小水力発電機を通すようにしたのだ。小水力発電機設置前と設置後の水の流れを簡単に示すと図2のようになる。

図3 小水力発電機設置前と設置後の水の流れ。出典:富山県

 発電機を流れる水量は最大で1秒当たり0.85m3で、水の落差は2.03mになる。発電した電力は売電せず、二上浄化センターで消費する。富山県はこれにより年間の電気料金をおよそ74万円削減できると見込んでいる。

 富山県は浄水場に小水力発電施設を設置した理由として水利権を取得する必要がないという点を挙げている。水力を利用して発電しようとすると、国土交通省に水利権の取得申請を出すなど、手続きが必要だ。利権争いになることがある。浄水場の処理済みの水なら、利権が絡むことはない。

 もう1つ、処理済みの水を利用するためゴミがたまることがほとんどないという利点もある。保守管理が楽になるということだ。

 下水汚泥を利用したバイオマス発電が話題になっているが、処理した水を利用して、小水力発電にも取り組む例は多くないだろう。そのうち、両方の設備を設置するという例も出てくるかもしれない。

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