ごみ発電に新技術、低温の排熱を使える「熱発電チューブ」自然エネルギー

京都市のごみ焼却施設で「熱発電チューブ」の検証実験が始まった。ごみの焼却時に発生する低温の排熱から電気を作り出せる新しい技術で、パナソニックが開発した。これまで廃棄されてきた熱を有効利用することができる、まさに再生可能エネルギーである。

» 2013年03月18日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 ごみを焼却する際には高温の熱が生じるため、その高熱で蒸気を作ってタービンを回して発電することができる。これが一般的な「ごみ発電」で、基本的な仕組みは火力発電と同じだ。パナソニックが開発した「熱発電チューブ」は低温の熱を利用できる点で従来のごみ発電とは大きく違う。

 通常のごみ発電の設備では、発電した後に低温の排熱が大量に放出される。これまでは大気に放出していたが、熱発電チューブを使うと低温の排熱で再び発電することが可能になる。その分だけ全体のエネルギー効率を高めることができる。

 パナソニックによれば、熱が伝わりにくい金属と伝わりやすい金属を交互に傾斜させて積み重ねたチューブを作ると、熱の流れと垂直な方向に電気が流れる現象が起こる。そこでチューブの内側に温水、外側に冷水を流すことにより、温度差が生じて発電する仕組みだ(図1)。

図1 熱発電チューブユニットの構造(左)とチューブの実物(右、2011年の開発時)。出典:パナソニック

 パナソニックは2011年に世界で初めて傾斜積層構造の熱発電チューブの開発に成功した。今回は検証用の熱発電チューブユニットを試作して、京都市のごみ焼却施設「京都市東北部クリーンセンター」に設置して実験を開始する(図2)。

図2 発電検証実験に協力する「京都市東北部クリーンセンター」。出典:パナソニック

 検証実験では24時間連続運転を実施して、発電能力などを確認する予定だ。ごみ焼却時に発生する熱のうち利用できていない低温の熱から作った温水と、施設内の冷却水を組み合わせて、熱発電チューブユニットで400ワット/立方メートル以上の電力を作り出すことを目標にする。2014年3月まで実験を続ける。

 熱発電チューブと同様に低温の熱を利用した発電方法として「バイナリー発電」がある。最近では温泉発電などに利用され始めた。

 低温の熱からでも発電できる技術が進むことで、新たな再生可能エネルギーの活用法が広がっていく。

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