南北600kmに広がる天然資源、地熱と風力の次に太陽光日本列島エネルギー改造計画(46)鹿児島

鹿児島県は最南端の与論島まで南北600キロメートルに広がり、離島の面積では日本一だ。多くの島で風力発電所が稼働する一方、2つの大きな半島から成る県本土は豊富な地熱を生かして温泉発電が進む。さらに鹿児島湾岸では日本で最大級の70MWのメガソーラー建設計画が始まった。

» 2013年03月21日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 鹿児島県の範囲。出典:鹿児島県環境林務部

 九州の各県と同様に鹿児島県も自然環境に恵まれていて、再生可能エネルギーの潜在量は極めて大きい。桜島が象徴する地熱に加えて、海洋資源が豊富にある。県の最南端の与論島までは南北に600キロメートルの距離があり、その間に数多くの美しい島が並ぶ(図1)。洋上風力発電を含めて再生可能エネルギーの拡大余地は大いにある。

 風力発電から順に現状を見ていこう。現在のところ最も規模が大きい風力発電所は、長崎県の天草諸島との間に浮かぶ長島にある。この島の丘陵一帯に、発電能力2.4MWの大型風車21基が稼働中だ(図2)。九州電力グループが運営する「長島風力発電所」である。21基で50.4MW(メガワット)の発電能力は日本でトップ5に入る。

図2 「長島風力発電所」の全景。出典:九州電力

 このほかにも広大な大隅半島と薩摩半島の沿岸部を中心に、10MWを超える大規模な風力発電所が7か所もある。離島では種子島や奄美大島、さらには最南端の与論島でも地元の建設協同組合が導入した600kWの風力発電所が稼働している。

 風力と並んで活発なのが地熱発電の取り組みだ。温泉で有名な指宿市には九州電力の「山川発電所」があり、3万kW(=30MW)の電力を供給している。この地熱発電所では新しい試みも始まった。温泉発電で使われることが多い「バイナリー発電」を導入して、既存の発電設備と組み合わせて地熱を最大限に活用する実証試験である(図3)。

図3 「山川発電所」(左)とバイナリー発電設備(右)。出典:九州電力

 従来の地熱発電では、地下から湧き上がってくる蒸気と熱水のうち高温の蒸気だけを使っていた。低温の熱水はそのまま地下に戻していたが、これをバイナリー発電で再利用する。地熱を2段階で活用して、新たに250kWの発電能力を追加することが可能になった。地熱を取り出す設備は従来のままで、環境に対する負荷を増やさずに発電能力を増強することができる。

 バイナリー発電設備を導入する動きは温泉施設にも広がっている。規模が大きいものでは同じ指宿市にある医療・健康施設の「メディポリス指宿」が1500kWの発電設備を導入する計画がある。通常の温泉水の層よりも深く井戸を掘ることで、温泉資源に対する影響を回避する。稼働は2014年9月を予定している。

図4 鹿児島県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 鹿児島県の再生可能エネルギーの導入量を見ると、地熱発電が最大で全国第4位だ。次に風力発電が大きくて、青森と北海道に続く第3位の規模になった(図4)。このほかの再生可能エネルギーの導入も進んでいるが、意外に少ないのが太陽光発電である。しかし状況は大きく変わろうとしている。

 現時点で建設が始まっているメガソーラーの中では日本で最大の「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」が2013年の秋に完成する予定だ。京セラグループが中心になって進めているもので、IHIが鹿児島湾岸に所有している127万平方メートルの土地に29万枚もの太陽光パネルを設置する大規模なプロジェクトである(図5)。

図5 「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」の建設地。出典:京セラ、IHI、みずほコーポレート銀行

 発電能力は70MWに達して、現在のところ日本で最大の「扇島太陽光発電所」の13MWと比べて4倍以上の規模になる。予定通りに完成すれば、その時点で日本最大の太陽光発電所になることは確実だ。年間の発電量は7900万kWhを見込み、一般家庭で2万2000世帯分を供給することができる。

 総投資額は250億円を想定して、金融機関を中心に事業投資型のプロジェクトファイナンスで調達する。今後は全国各地で大規模なメガソーラーの建設計画が増えてくるものと予想されるが、鹿児島七ツ島メガソーラーは資金調達の点でも先進的な事例として注目を集めている。

*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −九州・沖縄編−Part II」をダウンロード

2014年版(46)鹿児島:「水力と地熱を中核の電力源に、スマートグリッドで再エネを増やす」

2013年版(46)鹿児島:「南国の離島に豊富な自然エネルギー、火力依存からの脱却を図る」

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