マンションの電力を集中管理する「MEMS」キーワード解説

システムを使った節電対策は期待ほど進んでいない。ビル向けのBEMSや家庭向けのHEMSも導入が始まったばかりだ。そこに登場したのがマンション向けのMEMSで、各住戸の電気料金をまとめて安くできるメリットがある。4月から補助金制度も始まり、一気に普及する可能性が出てきた。

» 2013年03月29日 15時00分 公開
[スマートジャパン]

 電力の使用量を集中管理するEMS(エネルギー管理システム)は、対象の設備によって規模も機能も違う。そのために頭文字だけ異なる4文字の略語が数多く出てくる。規模が小さい順に挙げると、家庭向けのHEMS(Home)、ビル向けのBEMS(Building)、工場向けのFEMS(Factory)、地域向けのCEMS(Community)、といった具合だ。

 そこに新たにマンション向けのMEMSが加わった。規模や機能はビル向けのBEMSに近いが、大きな違いが2つある。1つはMEMSが管理する住戸ごとに家庭向けのHEMSが必要になることだ(図1)。もう1つの違いは、各住戸の電気料金を個別に計算する機能である。

図1  MEMSの導入イメージ。出典:経済産業省

 MEMSのほうがBEMSよりも細かい管理機能が求められ、しかもHEMSとの連携が不可欠になる。それだけシステムは複雑になると考えたほうがよい。4月からMEMSの補助金制度が始まるが、1件あたりの補助金は1000万円を超える。

 MEMSでは各住戸の電気料金を計算するために、スマートメーターを設置する方法が標準的になる。スマートメーターとHEMSが連携することによって、住戸内の電気機器を制御して電力使用量を抑えることも可能になる。いわゆる「デマンドレスポンス」を実現することができる。

 ほかにもMEMSには大きなメリットがある。通常はマンションでも個々の家庭が電力会社と契約する形をとっている。MEMSを導入すると、マンション全体で一括契約に変更して電気料金を引き下げることができる。「高圧一括受電」と呼ばれるもので、家庭向けの電気料金よりも単価が安くなる。さらにMEMSとHEMSで電力使用量を削減できれば、二重に電気料金を削減する効果が得られる。

 導入する側にとっては明確なメリットがあることから、MEMSが急速に普及する可能性は大いにある。政府は補助金制度を通じて年間で800棟の8万戸を対象にMEMSを設置する目標を掲げている。今後の新築マンションではMEMSが標準で装備されるケースも多くなるだろう。マンションのスマート化が一般の住宅やビルよりも早く進んでいくかもしれない。

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