作物を育てながら太陽光発電も可能に、農水省が対応を発表自然エネルギー

農地と太陽光発電システムは両立しうる。このような主張が広がっている。しかし、これまでは法律との整合性がはっきりしなかった。農林水産省は限定的ながら、農地を転用する指針となる文書を公開した。

» 2013年04月08日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 農地には日照が必要だ。逆に言えば、既存の農地では日照が得やすい。農地の上に藤棚のような設備を作り、間隔を空けて太陽電池を設置すれば、農業と発電が両立(ソーラーシェアリング)し得る――このような主張を実証する動きも現れ始めている。例えば、2012年8月には三重県に対して、農地転用のための条例を作って欲しいという声が寄せられている。農作物への影響を独自に調べる動きも始まっている。

 このような声が上がる理由は、農地の扱いがさら地や工業用地などとは異なるからだ。農地の利用には制限があり、営農以外の用途に使う場合は農地転用手続きが必要だ。だが、太陽光発電の扱いがはっきり決まっていない。

 そこで、農林水産省は2013年4月、このような農地転用に関する文書「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」を発表した。

 今回の文書は、農業従事者の声全てに応えるものではない。文書のタイトルにもあるように、農業生産を継続し、周辺の営農に影響を与えない限りという条件が付くからだ。さらに「(発電設備用の支柱が)簡易な構造で容易に撤去できるものに限る」という条件もある。太陽電池の直下でも営農を継続しなければならない。このため、支柱の基礎部分だけを農地転用だとした。

 利用条件には他にも制約が付く。繰り返し許可は可能なものの3年間の一時転用にとどめた。年に1回の報告を義務付けており、営農に支障が生じないようにしなければならない。支障とは作物の収量が地域平均の2割以上減少している場合や、作物の品質が著しく低下している場合、農業機械の利用が難しい場合をいう。

 文書では、「パネルの角度、間隔等からみて農作物の生育に適した日照量を保つための設計となっており、支柱の高さ、間隔等からみて農作業に必要な機械等を効率的に利用して営農するための空間が確保されていると認められること」とあるが、具体的な角度や間隔については言及がなく、数値が示されているのは作物の収量(2割減)だけだ。

 なお、今回の文書では、耕作放棄地の扱いは決まっておらず、引き続き検討する形になっている。

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