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» 2013年04月11日 09時00分 UPDATE

自然エネルギー:瀬戸内の230MWメガソーラー、太陽光発電でも環境保全を綿密に実施

岡山県の瀬戸内市にある広大な塩田の跡地に、圧倒的な規模のメガソーラーが5年後に誕生する。総事業費は550億〜820億円を想定している。失敗の許されない地域活性化プロジェクトは自然環境との共生をテーマに掲げ、太陽光発電では異例なほどの環境評価と保全対策を実施する。

[石田雅也,スマートジャパン]

 瀬戸内海に面した「錦海(きんかい)塩田跡地」の面積は500万平方メートルに及び、東京ディズニーランドの10倍の広さがある(図1)。この半分の敷地に太陽光パネルを設置すると、日本では圧倒的な230MW(メガワット)にも達する巨大な発電規模のメガソーラーになる。

setouchi1.jpg 図1 メガソーラーを建設する「錦海塩田跡地」。出典:瀬戸内市錦海プロジェクト推進課

 錦海塩田跡地を所有する地元の瀬戸内市が基本構想を発表したのは2012年6月で、提案競技の結果、7社の連合体による事業者が決定した。金融、プラント、電力、IT、通信、都市開発といった各分野の有力企業が集まり、かつてない規模で再生可能エネルギーによる地域の再開発プロジェクトに挑む(図2)。

setouchi3.jpg 図2 プロジェクトを推進する中核7社の役割分担。出典:瀬戸内市錦海プロジェクト推進課

完成は2018年、年間の売電収入は100億円に

 現在の計画では、2013年11月から建設工事に着手して、5年後の2018年9月をメドに発電事業を開始する。総事業費は550億〜820億円の範囲を想定していて、これは今後の太陽光パネルの価格低下の度合いなどに幅をもたせた設定に基づいているためである。いずれにしても巨額を要するプロジェクトで、資金調達は証券化の手法をとる。

 すでに発電設備の認定と電力会社への接続申し込みは2013年3月までに完了して、1kWhあたり40円(税抜き)の価格で20年間にわたって売電できる条件を確保した模様だ。これをもとに標準的な発電効率(12%)を使って計算すると、年間の売電収入は約100億円にのぼる。

 設置する太陽光パネルは約94万枚、電力を変換するためのパワーコンディショナーは約240台を導入する。当然ながら全体を管理するシステムが不可欠で、中核になるのは「統合設備管理・保全管理システム」と「発電設備監視システム」の2つである。これらのシステムをコンテナ型のデータセンターに収容して現地に設置する予定だ(図3)。

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setouchi7.jpg 図3 主要な管理システムの構成とコンテナ型データセンター。出典:瀬戸内市錦海プロジェクト推進課

 これだけ巨大な発電設備が人口4万人弱の小さな地方都市に生まれるとなると、電力会社の送配電ネットワークに接続することだけをとっても検討事項は数多くある。その点を含めてメガソーラーの設計作業を2013年9月までに完了させて、その後に送配電線の敷設工事などを開始する段取りになっている。

「自然環境保全ゾーン」で動植物を保護

 設計作業と並行して進める重要なプロセスが、環境保全対策の確認と開発認可の取得である。錦海塩田跡地の近くには「日本のエーゲ海」とも呼ばれる牛窓(うしまど)の海岸が広がっていて、巨大なメガソーラーを建設するにあたっては自然環境に影響を及ぼさないことが重要なテーマになっている。

 その点では綿密な事前調査を実施済みで、水質や動植物などに与える影響を細かく調べて対策を検討した。瀬戸内市がメガソーラーの建設に向けて策定した「錦海塩田跡地活用基本計画」は300ページを超える膨大な内容になっているが、そのうちの約半分は安全対策と環境影響評価が占めている。

 この基本計画の中で太陽光パネルを設置するエリアも限定した(図4)。動植物の保護に欠かせない湿地帯や遊水池の周辺は「自然環境保全ゾーン」に区分して太陽光パネルを設置しない。500万平方メートルある塩田跡地の30%以上に緑地を確保することも方針に盛り込んだ。

setouchi5.jpg 図4 太陽光パネルの設置エリア(青い斜線部分)。出典:瀬戸内市錦海プロジェクト推進課

 特に塩田跡地の周辺には絶滅危惧種を含めて貴重な鳥類が数多く生息している。生息状況の確認から始めて、工事期間中の監視方法や対策まで、詳細な実施計画が作られている。

 これまでの検討結果をもとに、さまざまな環境保全対策を施したメガソーラー建設の基本方針が1枚の絵にまとめられている(図5)。既存のクリーク(水路)や緑地を生かして、太陽光パネルを設置するゾーンの中でも動物の行動を妨げないように配置する。

setouchi4.jpg 図5 環境保全対策の実現イメージ。出典:瀬戸内市錦海プロジェクト推進課

 再生可能エネルギーの中では太陽光発電だけが、環境影響評価を義務付けられていない。通常であれば動植物などへの影響も少ないと考えられるが、発電設備の規模が巨大で、しかも自然環境に恵まれた瀬戸内海に面した場所に建設するため、異例とも言えるほどの環境保全対策を実施する。

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