ダムの直下で小水力発電、未利用の水流で300世帯分電力供給サービス

電力会社が水力発電用のダムに「小水力発電」の設備を相次いで導入し始めた。中国電力は広島県と島根県の県境にあるダムの直下に小水力用の水車と発電機を設置して、140kWの発電を開始した。ダムからの「河川維持流量放流」を利用したもので、300世帯分の電力を作ることができる。

» 2013年04月12日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 広島県の北部を流れる神野瀬川(かんのせがわ)の上流に「高暮(こうぼ)ダム」がある。このダムの水力を使って60年以上も前から「神野瀬発電所」が2万kWの電力を供給し続けてきた。新たに小型の水車と発電機をダムの直下に設置してできたのが「高野発電所」で、4月10日から140kWの規模で小水力発電を開始した(図1)。

図1 「高野発電所」の所在地と設備。出典:中国電力

 従来の水力発電はダムの取水口から大量の水を取り込んで大規模に発電する方式をとっている。発電した後の水は放水口から川に流されるが、その間に下流の水量が少なくなり、自然環境に影響を及ぼしてしまう。そこでダムから一定の水量を常に流し続ける。これを「河川維持流量放流」と呼び、これまでは単に流すだけだった。

 最近になって電力会社が再生可能エネルギーを拡大する施策のひとつとして、この維持流量を使った小水力発電に取り組んでいる。ダムの内部を通る水路の途中に水車と発電機を設置して、100〜500kW程度の発電を可能にするものが多い。

 水力発電の出力規模は水流の落差と量で決まる。高野発電所の発電能力は最大140kWで、利用する水路の落差は49メートル、水量は最大で毎秒0.5立方メートルになる(図2)。年間の発電量は100万kWhで、一般家庭300世帯分の電力を供給することができる。

 通常の水力発電と比べると発電量は少ないものの、自然環境に影響を与えない新しい発電方法として電力会社や自治体などが既存の設備に併設する形で導入を進めている。

図2 「高野発電所」の設置状況。出典:中国電力

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