連載
» 2013年05月14日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(7)福島:2040年にエネルギー自給率100%へ、太陽光を増やしてから風力を伸ばす

どこよりも早く「脱・原発」を掲げて復興に取り組む福島県は、2040年に県内のエネルギー需要の100%を自給できる体制を目指す。2015年までは太陽光を中心に導入量を増やし、その後は風力発電を大幅に伸ばす計画だ。木質バイオマスによるスマートコミュニティ計画も進み始めた。

[石田雅也,スマートジャパン]

 福島県に原子力発電所は要らない――。2040年までに再生可能エネルギーだけで県内の電力需要を満たせるように、県を挙げた取り組みが活発に進んでいる。その象徴が2013年2月に発表した「再生可能エネルギー先駆けの地アクションプラン」で、エネルギー自給率100%を実現するまでのロードマップを示した。

 このアクションプランには2015年までの毎年の目標値と具体的な施策が盛り込まれている(図1)。2015年までに最も大きく伸ばすのは太陽光発電で、2011年の規模から約7倍に増やす。導入までに時間がかかる風力は2015年以降に拡大することを想定して、10年単位で倍増ペースを見込む。それだけの大きなポテンシャルが福島県内にある。

target_fukushima.jpg 図1 福島県の再生可能エネルギー導入目標(画像をクリックすると拡大)。出典:福島県企画調整部

 いまのところ太陽光発電の導入量はさほど多くないが、すでに復興計画に沿って大規模なメガソーラーの建設計画が数多く始まっている。中でも最大のプロジェクトが県南部の太平洋に面した、いわき市の小名浜(おなはま)で進行中だ。

 小名浜は東北でも有数の臨海工業地帯を抱えていて、年間の日射量が多く、メガソーラーを建設するのに適している。工業地帯の一角に三菱商事グループが所有する工場や石油貯蔵設備がある。その敷地内で18MW(メガワット)の大規模なメガソーラーを建設する「小名浜太陽光プロジェクト」が始まっている(図2)。2014年8月に稼働する予定で、完成すれば東北地方で最大のメガソーラーになる見込みだ。

onahama.jpg 図2 「小名浜太陽光プロジェクト」の完成イメージ。出典:三菱商事

 このプロジェクトを筆頭に、メガソーラーの建設計画が続々と始まる。福島県がメガソーラーの候補地として情報を公開している面積1万平方メートル以上の場所が22か所あって、そのうち8か所は事業者が決定あるいは選考中の状態にある。

 福島県内で日射量が多い地域の分布を見ると、太平洋側に集中している(図3)。東日本大震災の津波と原子力発電所の事故による被害を大きく受けた地域である。メガソーラーを建設することは復興に向けた有効な施策のひとつになる。

nissharyo.jpg 図3 福島県の日射量。出典:福島県企画調整部

 一方で風力発電も有望であることがデータで実証されている。東北地方は北海道と並んで風力発電に適した場所が数多くある。陸上では青森から福島まで中央を縦断する高原地帯で強い風が年間を通じて吹き続ける。福島県の中央部には平均風速が10メートル/秒に達するような絶好の場所が南北に広がっている(図4)。

tohoku_furyoku.jpg 図4 東北地方の年間平均風速。出典:NEDO

 すでに稼働中の風力発電所では、日本で2番目の規模を誇る「郡山布引高原風力発電所」が33基の大型風車によって合計66MWの電力を供給する(図5)。さらに郡山市から太平洋側に20キロメートルほど離れた田村市では、「桧山高原風力発電所」が28MWの規模で稼働中だ(図5)。

kooriyama_hiyama.jpg 図5 「郡山布引高原風力発電所」(左)と「桧山高原風力発電所」(右)。出典:J-POWER

 風況に恵まれた福島県では長期的に風力発電の拡大が見込まれていて、陸上だけではなく洋上のプロジェクトに対する期待も大きい。2013年度中には福島県の沖合に大型の風車を浮かべて本格的な実証実験が始まる予定だ。2020年代になれば、数多くの洋上風力発電所が福島県の沖合で稼働していることだろう。

 2040年にエネルギー自給率を100%にするために、太陽光と風力を中心に、そのほかの再生可能エネルギーも組み合わせてバランスのとれた電力供給体制を構築することが可能な状況にある。小水力、地熱、バイオマスのいずれも県内各地で開発が進んでいる(図6)。

ranking2013_fukushima.jpg 図6 福島県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 最近の話題のひとつに、会津若松市で始まったスマートコミュニティ事業がある。その中でメガソーラーの建設とともに、木質バイオマスによるエネルギーの地産地消プロジェクトを推進していく(図7)。会津地方の山林から切り出した木材を加工後に木質チップにして、発電用の燃料に利用する。計画中のバイオマス発電所の規模は5MWを予定している。

aizuwakamatsu.jpg 図7 会津若松市の木質バイオマス活用計画。出典:会津若松市、富士通、東北電力

 南部の東白川郡でも、同様に木質バイオマス発電所を建設する計画がある。会津若松の2倍以上になる12MWの発電設備に加えて、高性能な排ガス集塵機を併設する予定だ。県内から集まる木材に含まれる放射性物質を除去するための装置である。被災地のハンデを乗り越えて再生可能エネルギーの拡大に取り組む先進的な事例になる。

 福島県をはじめ東北の太平洋沿岸部の復興計画において、再生可能エネルギーが果たす役割は大きい。

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −北海道・東北編−」をダウンロード

2015年版(7)福島:「太陽光発電で全国1位に躍進、被災地に新たなエネルギーの芽生え」

2014年版(7)福島:「世界最高レベルの発電技術を太平洋に集結、脱・原子力のシンボルに」

2012年版(7)福島:「風力発電2000MW計画を推進、洋上で世界初の大規模な試み」

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.