震災の被害を大きく受けた福島県は2012年3月に「再生可能エネルギー推進ビジョン」の改訂版を発表し、震災前よりも再生可能エネルギーの導入量を大幅に増やす方針を打ち出した。2020年までに風力発電を2000MWに拡大する計画で、世界初の大規模な浮体式の風力発電にも挑む。
小水力からバイオマスまで、あらゆる種類の再生可能エネルギーを導入してきたのが福島県の特徴だ(図1)。図らずも原発事故によって「Fukushima」の名前が世界に広まってしまったが、近い将来には再生可能エネルギーで目覚ましい復興を遂げたスマートシティとして再び脚光を浴びることになるだろう。
福島県は震災の直前に「再生可能エネルギー推進ビジョン」を発表していた。しかし震災後の情勢変化から、再生可能エネルギーの拡大を復興に向けた重要施策のひとつに位置づけることを決め、2012年3月にビジョンを改訂した。その中で導入目標を大幅に引き上げている。
最終的な目標は県内のエネルギー需要を上回る規模の再生可能エネルギーを供給できるようにすることで、2040年の実現を目指す(図2)。再生可能エネルギーの導入規模を2009年と比べて2020年に約2倍、2040年には約4倍に拡大する計画だ。
再生可能エネルギーの中で最も有望で、目標値を最も高く設定したのは風力発電である。福島県の推定によれば、風力発電の可能量は電力に換算して1225万kW(1万2250MW)に相当し、太陽光発電の2倍以上もある(図3)。
この巨大な潜在力を生かして、2020年までに風力発電の規模を一気に2000MWへ拡大する目標を立てた。現在のところ風力発電では北海道と青森県が最大の規模で、300MW程度である。福島県が2020年に目標を達成できれば、日本一になる可能性が大きい。
すでに県内には日本で2番目に規模の大きい「郡山布引高原風力発電所」(66MW)が2007年から運転を開始している(図4)。33基の大型風車を使って、3万5000世帯分の電力を供給する能力がある。これが2000MWに拡大すると、実に100万世帯分の電力を供給できる規模になるわけだ。
風力のほかに太陽光や地熱などを含めて再生可能エネルギーを飛躍的に拡大させるため、県が主導して施策を推進していく。具体的には、大規模な発電所を建設するためのファンドの組成や、土地所有者と事業者のマッチングなどである。すでに太陽光発電に関しては、2012年に入ってから大型の建設プロジェクトが相次いで決まっている。
さらに2020年に向けた注目すべき取り組みとして、世界で初めての大規模な浮体式による洋上風力発電プロジェクトが福島県沖で進められている。従来の風力発電所は丘陵や海岸に建設するケースが大半だが、より風が強くてスペースも広い洋上の風力発電が世界的に有望視される状況にある。
洋上風力発電は設備を海底に固定する「着床式」と海上に浮かべる「浮体式」の2通りがあって、建設できる場所は浮体式のほうが格段に広がる。福島県沖のプロジェクトでは7MWと2MWの大型発電設備を合わせて3基、いずれも浮体式で建設する計画だ(図5)。2015年度まで実証実験を続け、その成果をもとに導入事例を拡大していく。
2014年版(7)福島:「世界最高レベルの発電技術を太平洋に集結、脱・原子力のシンボルに」
2013年版(7)福島:「2040年にエネルギー自給率100%へ、太陽光を増やしてから風力を伸ばす」
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