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» 2013年05月21日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(8)茨城:洋上風力発電が広がる臨海工業地帯、農山村には太陽光とバイオマス

関東地方で風力発電が最も盛んなのは茨城県だ。太平洋に面した鹿島臨海工業地帯では日本最大の洋上風力発電が拡大を続ける一方、最先端のガス火力による発電設備も動き出した。農山村地域には太陽光発電を導入する動きが始まり、木質を中心にバイオマス発電も広がりを見せる。

[石田雅也,スマートジャパン]

 茨城県には海・山・川・湖のすべてがそろっている。地域ごとに気候や風土に違いがあり、それぞれの特色を生かした産業が形成されている。再生可能エネルギーも同様に、7つの地域ごとに分散型のネットワークを構築するモデルがある(図1)。このうち特に取り組みが進んでいるのは南部の工業地帯だ。

energy_network.jpg 図1 地域別の分散型エネルギーネットワーク(EN)構築モデル。出典:茨城県企画部

 東側を太平洋、西側を利根川と霞ヶ浦に囲まれた一帯に「鹿島臨海工業地帯」が広がっている。製鉄所や石油化学コンビナートと共存する形で、大規模な発電所が集まる地域だ。最南端の神栖(かみす)市は風力発電所の集積地として有名なところである。

 南北に細長い形をした神栖市には、沿岸部を中心に風力発電所が12か所もある(図2)。すべてを合わせると42基の風車が稼働していて、発電能力は70MW(メガワット)を超える。

kamisu_wind.jpg 図2 風力発電所が集まる神栖市(左が市の北東部、右が南部)。出典:神栖市企画部

 中でも注目が集まるのは2013年3月に運転を開始したばかりの「ウィンド・パワーかみす第2洋上風力発電所」である。臨海工業地帯の護岸から50メートルほどの洋上に、1基で2MWの大型風車が8基並んでいる。さらに南側には3年前に稼働した「第1洋上風力発電所」の7基があり、合計15基の洋上にある風車から最大30MWの電力を供給することが可能だ(図3)。

 15基の風車は海底に設備を固定する「着床式」と呼ばれる構造を採用したもので、稼働中の洋上風力発電所では国内最大の規模を誇る。今後の拡大が期待される洋上風力発電所の先進的な事例になる。

windpower_kamisu.jpg 図3 「ウィンド・パワーかみす第2洋上風力発電所」。先に見えるのが「第1洋上風力発電所」。出典:小松崎都市開発

 実際に15基の風車が稼働しているすぐ北側の洋上では、さらに大規模なプロジェクトが進行中だ。臨海工業地帯の中心に位置する鹿島港の沖合に、茨城県が680万平方メートルの区域を洋上風力発電用に割り当てた(図4)。

 構想では1基あたり5MWの大型風車を50基建設して、合計250MWにのぼる世界でも最大級の洋上風力発電所を実現させる計画だ。すでにウィンド・パワーかみすを運営するウィンド・パワー・エナジーと丸紅の2社が発電事業者に決まり、4年後の2017年の稼働に向けて準備を開始した。

kashima_youjou.jpg 図4 「鹿島港洋上風力発電事業」の予定区域。出典:茨城県土木部

 こうして洋上風力発電の分野で先行するのと並行して、火力発電でも先進的な取り組みが進んでいる。鹿島港には東京電力の「鹿島火力発電所」がある。石油を使った火力発電で440万kW(=4400MW)の巨大な供給力を発揮してきた旧式の発電所だが、新たに3基のガスタービン式による火力発電設備が2012年の夏に加わった。これで供給力が80万kW増えて、日本最大の火力発電所になった。

 今後3基のガス火力発電設備は最先端のコンバインドサイクル方式に改修して発電効率を引き上げる計画もある。この改修によって2014年7月までに発電能力が44万kW増える予定だ(図5)。鹿島臨海工業地帯の発電規模は洋上風力とガス火力の両方でますます拡大していく。

kashima_toden.jpg 図5 「鹿島火力発電所」の設備増強計画。7号機の3基がガスタービン式。出典:東京電力

 かつて1990年代の半ばまで、茨城県内の発電量は使用量を上回っていた。それ以降は使用量が増え、原子力発電所の運転停止もあって発電量が減ったことで、自給率100%は実現できていない。今後は節電の推進とともに、火力発電の増強と洋上風力を中心とする再生可能エネルギーの拡大によって、再び自給率100%を達成することが十分に可能だ。

 現在までの再生可能エネルギーの導入状況を見ると、風力の次にバイオマスが多い(図6)。茨城県は農業の生産額が全国で2番目に多く、農作物や生ごみなどを活用したバイオマス発電設備やバイオガス製造設備が各地に広がっている。

ranking2013_ibaragi.jpg 図6 茨城県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 農山村地域では太陽光発電の拡大にも期待がかかる。このところ農業従事者の減少に伴って耕作を放棄したままの土地が増えている。中でも県の中央部は日射量が多くて太陽光発電にも適しているため、未利用の土地を有効に活用する施策として検討が進んでいる(図7)。

 ただし農地の転用には認可が必要になるなど、実現までには高いハードルがあるのも事実だ。環境保全の問題もあり、地元の自治体や住民による理解と協力が必要になる。再生可能エネルギーには必ず付いてまわる課題で、ある程度の時間がかかることは避けられないだろう。

solar_candidate.jpg 図7 太陽光発電に適した耕作放棄地の分布状況。出典:GIS総合研究所いばらき

 それでも茨城県内ではメガソーラーが確実に増えていく。すでに固定価格買取制度で認定を受けたメガソーラーの規模は北海道に次いで第2位の556MWに達して、大半は今後2年以内に稼働する見込みだ。その中には「水戸ニュータウン」の未造成の土地に建設する関東で最大級の40MWの大規模プロジェクトもある。

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −関東・甲信越編 Part1−」をダウンロード

2015年版(8)茨城:「メガソーラーが50カ所以上で動き出す、風力は洋上へ、バイオマスは森林から」

2014年版(8)茨城:「太陽光発電で全国2位、メガソーラーが港や湖から線路沿いまで広がる」

2012年版(8)茨城:「太平洋岸に風力発電所の集積地、洋上にも続々と建設中」

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