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» 2013年05月29日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:水素を「作る」スタンド、愛知県に2カ所開設 (1/2)

燃料電池車向けの供給インフラ「水素ステーション」が続々立ち上がっている。愛知県では2カ所で運用を開始。特徴は水素をステーションに運び込むのではなく、ステーション内で他のガスから水素を製造することだ。

[畑陽一郎,スマートジャパン]
yh20130529NEDO_map_250px.jpg 図1 神の倉水素ステーション(左)と、とよたエコフルタウン水素ステーション(右)の位置

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の水素研究の歴史は長い。1980年の設立時から約30年間の積み重ねがある。現在のテーマは水素供給インフラだ*1)。「地域水素供給インフラ技術・社会実証」として、2015年からの燃料電池車(FCV)の普及開始に向けた実証研究を推進している。

 2015年時点の技術レベルとして、NEDOは幾つかの数字を挙げている。水素ステーションのコストは4億円(70MPa)、水素供給コストは90円/Nm3である。燃料電池車側は、耐久性1500時間(15年)、生産台数が50万台規模の場合のシステムコストは約100万円とした。これを目指した研究開発と実証実験が積み重ねられている。

*1) この他、水素を利用する燃料電池の一種、固体高分子形燃料電池(SOFC)の実用化推進技術開発も続けている。これはエネファームに使われる技術だ。

 水素供給インフラとして、2013年4月にはガソリンスタンドと併設する初めての水素ステーション「海老名中央水素ステーション」(神奈川県海老名市)の運用が開始、2013年5月にはさらに2つの水素ステーションが愛知県内に立ち上がった。「神の倉水素ステーション」(名古屋市緑区)と「とよたエコフルタウン水素ステーション」(愛知県豊田市)だ。どちらも水素供給・利用技術研究組合(HySUT)との共同実証事業の一環である。

 今回の2カ所の水素ステーションは、いずれもステーション内で原料ガスから水素を製造するオンサイト方式を採ったところに特徴がある。しかし、採用した技術は細部がそれぞれ異なる。どのような場合にどの技術が適しているかを探るためだ。

市街地に設置した神の倉

 神の倉水素ステーションは、JX日鉱日石エネルギーが運用する(図2、図3)。同社は海老名中央ステーションも運用しており、どちらもガソリン計量器と水素充填機を並列設置したタイプのスタンドだ。今回は「Dr.Drive神の倉店」の敷地内に設けた。70MPa(700気圧)という高圧での水素充填が市街地で認められた初の水素ステーションでもある。

yh20130529NEDO_kaminokura1_590px.jpg 図2 神の倉水素ステーションの外観。一番奥に水素充填機がある。出典:JX日鉱日石エネルギー
yh20130529NEDO_kaminokura2_590px.jpg 図3 水素充填機とトヨタ自動車の燃料電池車。出典:JX日鉱日石エネルギー

 水素ステーションを成り立たせている設備は数多い。筐体に相当するパッケージ型設備は、工場で機器や配管一式を標準規格コンテナ内にセットしたもの。ステーションでの設置工事期間短縮とコスト削減を目的とした設計だ。トキコテクノが製造した。水素製造装置(水蒸気改質技術)は三菱化工機、圧縮機は日立製作所、蓄圧器(ガス容器)はサムテック、冷凍機はオリオン機械がそれぞれ担当した。

 ステーションでは、液化石油ガス(LPG)を運び入れ、水蒸気改質技術を使って水素を製造する*2)。製造能力は1時間当たり150Nm3だ。製造した水素は1時間当たり100Nm3の能力を持つ圧縮機で圧縮し、蓄圧器に貯蔵する。82MPaの圧力の200Lタンクを11本備える計画だ。燃料電池車が搭載する水素タンクの圧力は70MPa*3)なので、蓄圧器からディスペンサーを通じて直接車に供給できる。なお、燃料電池車1台当たりの充填量として50Nm3を想定しているため、1時間当たり2〜3台の水素を供給できることになる。水素充填時間自体はガソリン並に短く、約3分間だ。

*2) LPGの主成分はプロパン(C3H8)だ。水蒸気と反応させると二酸化炭素(CO2)など炭素を含んだガスが副産物として生じる。これをPSA(Pressure Swing Adsorption)精製技術で取り除いている。三菱化工機のシステムは改質と精製を同一の装置内部で進める。同社によれば製造時のエネルギー効率は世界最高レベルだという。
*3) 燃料電池車のタンクの圧力は70MPa以外に、35MPaのものも存在するが、JX日鉱日石エネルギーによれば、2015年時点には70MPaに統一される見込みだという。

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