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» 2013年06月14日 09時00分 UPDATE

スマートファクトリ:実は役に立つ二酸化炭素、工場の排煙から取り出して農業に役立てる佐賀市の試み

火力発電所や工場の排煙からは大量の二酸化炭素が放出されている。これを低コストで分離、回収できれば、さまざまなメリットが生まれる。佐賀市は回収した二酸化炭素で農作物の成長を促進する事業を2年間で進める。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 火力発電所や清掃工場の排煙に対する規制は厳しい。すすなどのばいじんは電気集塵機で取り除かれ、硫黄酸化物や窒素酸化物も除去される。問題はある1つの化学物質が全く手付かずで放出されていることだ。二酸化炭素(CO2)である。

 佐賀市は清掃工場が排出する二酸化炭素だけを取り出し、農産物の成長促進や藻類の培養に役立てる実証実験「清掃工場バイオマスエネルギー利活用促進事業」を開始した。2013年4月から2014年3月までの2年間の促進事業であり、2012年度は市の予算から3100万円を投じる(図1)。以下で紹介する化学吸収法を使った二酸化炭素分離回収システム(CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization)の実証実験を清掃工場を対象として開始するのは国内初だという。

yh20130614Saga_schedule_518px.jpg 図1 促進事業のスケジュール。出典:佐賀市

 促進事業の舞台は佐賀市内にある2カ所の清掃工場のうちの1つ、佐賀市清掃工場である。二酸化炭素分離回収装置を東芝が提供し、焼却炉の設計や設置実績が多い荏原環境プラントが協力する。荏原環境プラントは九州電力とともに工場におけるエネルギーの高度利用も試みる。排出ガスの成分分析では佐賀県環境科学検査協会が参画する。

 促進事業が取り組む内容は大きく2つに分かれる。二酸化炭素回収実験と二酸化炭素の利活用方法の調査研究だ。東芝は二酸化炭素回収実験用の装置を設計中であり、2013年9月に据え付けて、10月から実験を開始する。

CO2をどうやって分離回収するのか

 東芝が二酸化炭素の分離回収に取り組むのは佐賀市が最初ではない。2009年にシグマパワーの有明三川発電所(福岡県大牟田市)に1日10トンの二酸化炭素を分離回収できるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)実験プラントを建設しており、現在も運転中だ。有明三川発電所は出力4万7500kWの火力発電所だ。

 東芝の技術は、化学吸収法の一種である。排ガスを脱塵・脱硫・脱硝した後、吸収塔と呼ばれるタワーに導く(図2)。タワー内部では二酸化炭素を吸収する特殊な液体を落下させ、排ガスと混合する。すると、排ガス中の二酸化炭素の約90%が液体に取り込まれる。液体だけを別のタワーである再生塔に導き加熱すると、二酸化炭素を放出し、純度99%以上の二酸化炭素が得られるという仕組みだ。液体は何度も再利用できる。東芝はモノエタノールアミンなどのアミン系水溶液を利用している。

 図2では草色が排ガスの流れ、黄緑色が二酸化炭素の流れ、紫色がアミン系水溶液の流れを意味している。

yh20130614Saga_mikawa_400px.gif 図2 大牟田市の実験プラントの構成。出典:東芝

 佐賀市の促進事業で東芝が設置するプラントの基本的な仕組みは有明三川発電所のものと同じだ。違いは2つある。まずは規模が小さいことだ。1日当たり20kgの処理能力とする。

 もう1つは佐賀市の促進事業では回収した二酸化炭素を農業や藻類の培養に利用すること。つまり、人体などに有害な成分をほとんど含まず、純度の高い二酸化炭素を回収できなくてはならない。有明三川発電所では回収した二酸化炭素を環境から分離して、液化貯留することを目的としたCCSが目的であるため、佐賀市の事業の方が難易度が高いともいえる。

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