川崎が日本最大のバイオマス発電の地に、JFEエンジの技術を使う自然エネルギー

川崎市には出力33MWの川崎バイオマス発電がある。2015年12月には昭和シェル石油の49MWが加わる。幅広い燃料を利用可能なJFEエンジニアリングのCFBボイラ技術を利用する。

» 2013年10月08日 14時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 川崎区と発電所の位置

 国内最大級のバイオマスプラントが川崎市に誕生する。出力は49MW(発電端)、想定年間発電量は30万MWh(3億kWh)であり、一般的家庭約8万3000世帯の年間消費量に相当する。1kWh当たりの売電単価は24円(税別)。

 発電所の事業主体は昭和シェル石油だ。約160億円を投じて、京浜製油所扇町工場の跡地(川崎市川崎区扇町)のうち一部、約4万m2を利用、次世代火力発電所を建設する(図2)。2014年4月に着工し、2015年12月には発電を開始する計画だ。

図2 発電所の建設予定地。昭和シェル石油の所有地である。出典:昭和シェル石油

 同社は電力事業の規模の拡大と発電源メニューの拡充を中期経営アクションプランでうたっている。これは電力事業を石油事業、太陽電池事業に続く第三の柱へと育てるためだ。

 それではなぜ火力発電なのだろうか。バイオマス発電は、植物の成長に従って再生可能な燃料を利用するため、固定価格買取制度(FIT)が適用されること、発電所の後背地に大消費地があり、大電力を使いやすいこと、図2でも見て取れるように東京湾を利用した海運を使いやすくバイオマス燃料の海上輸送に適しているためだ。「主に北米から、一部東南アジアから燃料を調達する」(昭和シェル石油)。

JFEエンジニアリングの循環流動層ボイラを採用

 2013年8月に同社が計画を発表したことと前後して、発電プラントを比較検討した結果、2013年10月にJFEエンジニアリング(JFE)の提案が採用された。JFEは、発電所の設計・調達・建設(EPC)を担当する。プラントの面積は約1万7000m2である。

 JFEの技術は循環流動層(CFB:Circulating Fluidized Bed)と呼ばれるボイラ発電システムだ(図3)*1)。JFEによれば、今回の規模のバイオマス発電所向けとしては最も高効率で経済的であり、川崎市の厳しい環境規制にも対応できるという。

 「CFBボイラの最大の利点は利用できる燃料の種類に幅があることだ」(同社)。バイオマス燃料は燃料の性質が必ずしも一定ではなく、複数の燃料を混焼する際の比率を一定にしなくてもよいボイラであれば使いやすい。バイオマス以外にも建設廃材や廃プラスチック、タイヤチップなど多様な燃料を混焼できるという。

 CFBボイラがこのような性質をもつ理由は、垂直方向に細長いボイラの中で、燃料と流動媒体を高速の燃焼空気によって混合、流動化させながら燃焼を進める方式を採っているからだ。

 今回のバイオマス発電所では燃料として、木質を顆粒状に破砕後、圧縮整形した木質ペレットやアブラヤシの搾油後に残る種殻であるパームヤシ殻(PKS)を使う。

 図3にある概要図のうち、最も背の高い設備がCFBボイラである。3段になっている建物が蒸気タービンと発電設備、屋上に4基の白いファンが見える建物は冷却塔だ。「CFBボイラの蒸発量は180トン/時、圧力は10.2kg/cm2G、燃焼温度は541度である」(同社)。

*1) JFEによれば、燃料としてPKSのみを使うCFBボイラの国内最初の事例は、同社がイーレックスから受注したプラントであるという。工事は2013年6月に完了している。

図3 建設するプラントの概要図。出典:JFEエンジニアリング

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