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» 2013年10月15日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(29)奈良:北の大和盆地で小水力発電、南の吉野山地にメガソーラー

奈良県は北部の盆地と南部の山地に分かれ、気候も自然も大きく変わり、再生可能エネルギーの取り組みでも違いを見せる。大和盆地を中心に都市が集まる北部では浄水場の水流を生かした小水力発電が活発に進む。南部では杉や桜で有名な吉野山地を中心にメガソーラーが広がってきた。

[石田雅也,スマートジャパン]

 関西は府県ごとの自然環境に大きな差がある。導入できる再生可能エネルギーの種類もさまざまだ。奈良県は大阪府に次いで面積が狭いものの、中小水力発電のポテンシャルでは他府県を上回っている(図1)。面積の8割近くを森林が占めていて、山と川からの水資源が豊富にあるためだ。

potential_suiryoku.jpg 図1 関西の中小水力発電のポテンシャル。出典:奈良県産業・雇用振興部

 小水力発電を開発できる余地が多く残っている中では、都市部にある浄水場の取り組みが先行して進んでいる。典型的な例は桜井市の「桜井浄水場」に見ることができる。浄水場では水源から水を取り込むまでに高低差があり、その水流を生かして発電する方法だ。

 桜井浄水場には、近くにあるダムから水が送られてくる。水を貯めておく原水貯留池に水を引き込むための流入管に発電機を設置した(図2)。2010年から稼働を開始した設備で、発電能力は197kWと小水力発電としては規模が大きい。年間の発電量は156万kWhになり、一般家庭で420世帯分の電力を供給することができる。

sakurai_jousuijou.jpg 図2 「桜井浄水場」の小水力発電の設備と仕組み。出典:奈良県水道局

 これと同様の方法で小水力発電を実施することは多くの浄水場で可能である。奈良県内で最も新しい発電設備が、生駒市の「山崎浄水場」で2013年3月から運転を開始した(図3)。この浄水場でも近隣の調整池から送られてくる水を取り込む際に、調整池との間に70メートルの高低差がある。従来は高低差によって生じる水圧を浄水場で減圧していたが、減圧しないまま水車発電機に取り込めるようにした。

yamazaki_shosuiryoku.jpg 図3 「山崎浄水場」の小水力発電所。出典:生駒市生活環境部

 発電能力は桜井浄水場よりも低い40kWながら、24時間の連続運転を前提に年間の発電量は35万kWhを想定している。発電した電力は固定価格買取制度を利用して、1kWhあたり34円で売電することができる。年間の収入は約1200万円になり、買取期間の20年間で2億4000万円を見込める。設備の導入・維持費を差し引いても8000万円の利益が出る計画だ。

 浄水場の水流は年間を通じて安定しているため、小水力発電の中でも特に天候に左右されにくいメリットがある。既存の水路を活用できる点で工事費も安く済む。確実な収益を予想できることから、今後さらに多くの浄水場へ同様の取り組みが広がっていくだろう。

 奈良県の再生可能エネルギーの導入量は小水力発電の次に、太陽光発電が多い(図4)。関西の中では和歌山県に次いで少ない規模だが、着実に増えつつある。最近になって南部の吉野地方でメガソーラーの建設プロジェクトが相次いでいる。

ranking2013_nara.jpg 図4 奈良県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 先頭を切ってメガソーラーの運転を開始したのは、奈良県内で太陽電池を製造しているシャープだ。吉野町の丘陵に「シャープ美吉野(みよしの)太陽光発電所」を2013年7月に稼働させた(図5)。発電能力は2.7MW(メガワット)で、年間の発電量は270万kWhを見込んでいる。一般家庭で800世帯分の電力使用量に相当する。

miyoshino.jpg 図5 「シャープ美吉野太陽光発電所」の全景。出典:シャープ

 さらに吉野町に隣接する大淀町でも、同規模のメガソーラーの建設が始まっている。近畿日本鉄道が自治体と共同で開発中の「花吉野ガーデンヒルズ」の一角に、3MWのメガソーラーを配置する。2014年3月に運転を開始する予定だ(図6)。

 近鉄吉野線の駅前を中心に、住宅地と公園のほか、救急病院や植物工場まで備えた環境志向の都市開発を目指している。メガソーラーには急速充電器を設置して、地域内を走る電気自動車にも電力を供給できるようにする。災害時には地域の電力源として、スマートハウスと連携したエネルギー管理を実現する計画もある。

hanayoshino.jpg 図6 「花吉野ガーデンヒルズ」のメガソーラー建設予定地。出典:近鉄

 奈良県は平坦な土地が少なく、太陽光発電に適した場所とは言いがたい。実際に関西の中でも太陽光発電のポテンシャルは小水力発電とは逆に最も少なく、兵庫県と比べると4分の1以下の規模しかない(図7)。太陽光発電の限られた導入可能性を最大限に生かすためには、花吉野で取り組むようなスマートタウンを展開していくことが有効な施策になる。

potential_solar.jpg 図7 関西の太陽光発電(非住宅)のポテンシャル。出典:奈良県産業・雇用振興部

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −関西編−」をダウンロード

2015年版(29)奈良:「歴史のまちに小水力と太陽光発電、自然のエネルギーから地域を再生」

2014年版(29)奈良:「内陸県に広がる太陽光とバイオマス、導入目標を60MW上乗せ」

2012年版(29)奈良:「森林が77%も占める内陸県の挑戦、木質バイオマスを最重点に」

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