奥飛騨温泉郷で2MWの地熱発電、2015年の運転に向けて調査開始自然エネルギー

新たな地熱発電の開発プロジェクトが岐阜県北部の温泉地域で始まった。場所は中部山岳国立公園に隣接する奥飛騨温泉郷で、2015年の運転開始を目指して地熱発電所を建設する計画だ。発電能力が2MW(メガワット)の小規模な設備を導入して、短い工期で事業化を早める。

» 2013年11月20日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 奥飛騨温泉郷は岐阜県と長野県の県境にあって、3000メートル級の北アルプスの山々に囲まれた秘湯である。この温泉郷の一角を占める「中尾温泉」(図1)で、地熱発電の開発プロジェクトが11月19日にスタートした。

 全国各地に地熱発電所の展開を目指す東芝とオリックスが共同で取り組むもので、新たに設立した合弁会社を通じて地熱発電事業を早期に立ち上げる計画だ。

図1 中尾温泉の風景。出典:奥飛騨温泉郷観光協会

 中尾温泉は高温の蒸気が大量に噴出することで知られていて、地熱発電に適した場所であることがわかっている。新会社は源泉の調査から始めて、噴気試験や周辺環境調査を経て、事業性を評価してから発電設備の建設に入る。運転開始は2015年内を予定している。

 発電設備には東芝が地熱向けに開発した「Geoportable(ジオポータブル)」を導入する(図2)。Geoportableは発電機や蒸気タービンをパッケージ化した小型の発電設備で、出力は1〜2MW(メガワット)と地熱発電としては小規模だが、設置工事を短期間に完了できる利点がある。中尾温泉では2MWの発電規模で運転する見込みだ。

図2 地熱発電設備の「Geoportable」。出典:東芝

 地熱発電は大規模になると、開発期間に10年以上を要する。事前の掘削調査に加えて、法律で義務づけられた環境影響評価に膨大な時間とコストがかかるためである。ただし発電能力が10MW未満の設備であれば規制の対象にならず、2〜3年程度で建設することが可能になる。

 さらに地熱発電に適した地域は自然公園法の規制対象に含まれるケースが多いという難問もある。中尾温泉がある奥飛騨温泉郷は中部山岳国立公園に隣接するものの、指定区域には含まれていないために、建設にあたって国の認可を受ける必要がない。この点も事業化を後押しする要因になる。

 東芝とオリックスは中尾温泉のプロジェクトで事業性を確認したうえで、同様の条件を満たす他の温泉地域にも小規模の地熱発電所を展開していく考えだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.