先行する東京電力の火力発電、熱効率60%級の新設備が相次いで稼働電力供給サービス(1/2 ページ)

東京電力は12月2日と4日に最先端のガス火力発電設備の試運転を2カ所で開始した。東日本大震災の後に緊急で導入した設備を増強したもので、熱効率を世界最高水準の57〜58%に高めた。今後4年間で合計8基の火力発電設備が営業運転に入る予定で、供給力は400万kW以上も増える見込みだ。

» 2013年12月06日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の電力全体の約3割を販売する東京電力の発電設備は火力が半分以上を占める。火力発電所は全部で15カ所あって、大半が東京湾岸に集中している(図1)。そのうちのひとつ「千葉火力発電所」で、12月4日に新しい発電設備が試運転を開始した。さらに2日前には茨城県の太平洋岸にある「鹿島火力発電所」でも同様の設備が動き出している。

図1 東京電力の発電所とサービス区域。出典:東京電力

 2つの新しい設備はガス火力発電で最先端の「コンバインドサイクル方式」を採用したもので、ガスから電力への変換効率(熱効率)は57〜58%の高水準を発揮する。従来の火力発電と比べて約1.5倍の電力を生み出すことができて、燃料とCO2を3分の2以下に減らすことが可能だ。

コンバインドサイクルに統一する「千葉火力発電所」

 千葉火力発電所では2000年に運転を開始した「1号系列」と「2号系列」の合計7基のほかに、震災後の緊急対策で設置した「3号系列」の3基がある。1号系列と2号系列にもコンバインドサイクル方式を導入して54%の高い熱効率を実現している。

 新たに増強中の3号系列では熱効率が58%まで向上する(図2)。3基で構成する発電設備は試運転を経て2014年4月〜7月に営業運転(正式稼働)を開始する予定だ。発電能力は現行の100万kWから150万kWに拡大する。千葉火力発電所の全体では438万kWになり、再稼働を申請中の「柏崎刈羽原子力発電所」の6号機・7号機の合計271万kWを大きく上回る。

図2 「千葉火力発電所」の設備増強計画。出典:東京電力

日本最大の565万kWになる「鹿島火力発電所」

 もう一方の鹿島火力発電所は1970年代から運転を続ける旧式の発電設備を数多く抱えている。石油を燃料に使う1号機〜6号機の横では、最新のガス火力による「7号系列」が3基の構成で運転中だ。千葉の3号系列と同様に震災後に導入した緊急電源で、コンバインドサイクル方式に移行すると熱効率は57%へ大幅にアップする(図3)。営業運転の開始は2014年5月〜7月を予定している。

 3基の増強が完了すると発電能力は80万kWから125万kWに増えて、既存の石油火力と合わせて565万kWの規模に拡大する。全面稼働後は同じ東京電力の「富津火力発電所」(504万kW)を抜いて、国内最大の発電所になる見通しだ。

図3 「鹿島火力発電所」の設備増強計画。出典:東京電力

コンバインドサイクルで環境負荷も低減

 コンバインドサイクルはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電する方式で、千葉と鹿島では既存のガスタービンに新しい蒸気タービンを追加する(図4)。ガスタービンの排熱を回収して蒸気を発生させる仕組みだが、そのために必要な排熱回収ボイラーと合わせて「排煙脱硝装置」を設置する方針だ。この装置で有害な窒素酸化物などを除去する。

図4 コンバインドサイクル方式への設備変更(赤枠内の機器を新設)。出典:東京電力

 それでもCO2を大量に排出する火力発電は、地球温暖化の観点から国際的に問題視する風潮が強まっている。よりいっそう環境負荷を低減するためには、熱効率をもっと高めてCO2排出量を少なくしていく必要がある。すでに熱効率が60%を超える火力発電設備の計画も着々と進んでいる。

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