先行する東京電力の火力発電、熱効率60%級の新設備が相次いで稼働電力供給サービス(2/2 ページ)

» 2013年12月06日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

60%超に向けて技術革新は止まらない

 現時点で国内最高の熱効率59%を発揮する火力発電設備が、東京電力の「川崎火力発電所」と「富津火力発電所」で営業運転の状態に入っている。ガスの燃焼温度を1500度まで高めたもので、最先端のコンバインドサイクル方式であることから「MACC(Most Advanced Combined Cycle)」と呼ばれる。千葉で試運転を開始した新設備も同じ1500度級である。

 さらに燃焼温度を1600度まで引き上げた「MACC II」の開発も進んでいて、2016年〜2017年に川崎で営業運転を開始する予定だ(図5)。熱効率は61%になり、1基あたり71万kWの発電能力を発揮する。すでに稼働中の1500度級が1基、新たに1600度級が2基の構成で、合計192万kWの電力を熱効率60%で供給できるようになる。

図5 ガス火力発電設備の効率向上計画。出典:東京電力

2017年までにガス火力で467万kW増強

 東京電力の供給計画によると、2013年度に水力、石炭火力、LNG(液化天然ガス)火力、原子力、新エネルギー(風力)の5分野で電源の開発を推進中だ(図6)。そのうち5年以内に稼働する設備の大半は石炭火力とLNG火力である。石炭火力が2カ所で160万kW、LNG火力が川崎・千葉・鹿島の3カ所で467万kWを見込んでいる。

図6 2013年度の主な電源開発計画。出典:東京電力

 LNG火力は川崎の50万kWが稼働済みで、残る417万kW分も2014〜2017年度に営業運転を開始する。こうした新規の電源開発と並行して古い火力発電所を止めていけば、供給力を引き上げながら燃料費とCO2排出量を削減することが可能になるわけだ。

原子力がなくても1000万kW以上の余力

 東京電力の電源構成比をみると、直近の2012年度ではガス火力が44%を占めて最も多く、石油火力もまだ17%残っている(図7)。燃料費が安い石炭火力は2%に過ぎない。今後は高効率のガス火力や石炭火力を拡大しながら、燃料費が高い石油火力を廃止していく方向だ。

図7 過去10年間の電源構成比(単位は%。ただし最上段の数値とカッコ内は電源の出力合計で単位は万kW)。出典:東京電力

 このほかに発電事業者が供給する分を加えると、電源の規模は2012年度に7849万kWになった。原子力を除いても6311万kWの発電設備がある。一方で東京電力管内の最大電力は2001年度の6430万kWをピークに下降を続け、2012年度には5078万kWまで下がった(図8)。

 たとえ原子力発電所を再稼働させなくても、そのほかの設備をすべて稼働できれば、最大電力まで1000万kW以上の余裕がある。今後さらに高効率の火力発電設備が運転を開始することによって、古い設備を段階的に停止していっても、十分な供給力を確保できるだろう。

図8 最大電力の推移(各年度の最大値)。出典:東京電力

 火力発電の増加に伴う燃料費の問題は解決に向かっている。残る課題はCO2排出量を低減させることで、その分野でも「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage、CO2回収/貯留)」に関する技術開発が主要メーカーのあいだで進んできた。火力発電の弱点は急ピッチで解消されつつある。

*この記事の電子ブックレットをダウンロードへ

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.