富士山の山麓で太陽光発電の自粛を要請、世界文化遺産の景観を守る法制度・規制

静岡県の富士市が特定地域を対象に、太陽光発電設備の設置自粛を要請する行政指導方針を施行した。富士山頂から南へ20キロメートルほどの場所にある環境管理計画区域で、広さは6700万平方メートルにおよぶ。罰則のない行政指導とはいえ、太陽光発電設備を設置することは難しくなった。

» 2013年12月12日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 自粛を求める地域は富士山の南側の山麓に広がる森林地帯である。富士市が1991年から「自然の節度ある利用」をスローガンに開発を抑制してきた「富士・愛鷹(あしたか)山麓地域環境管理計画」の対象区域である(図1)。富士山麓の緑豊かな自然を守るのと同時に景観を損ねないようにすることが計画の目的になっている。

図1 太陽光発電設備の自粛を求められる「富士・愛鷹山麓地域環境管理計画」の対象区域。出典:富士市環境部

 2012年7月に固定価格買取制度が開始されて以降、静岡県内でも太平洋沿岸を中心に大規模な太陽光発電設備の建設が相次いでいる。富士市みずからも沿岸部にある下水処理施設の屋根にメガソーラーを建設中だ。ただし富士山の山麓地域にまでメガソーラーが広がってしまうと、景観や眺望を損ねる可能性があるため、地域と条件を指定して自粛を要請することになった。

 対象区域を横断する国道469号を境に、北側の土地は無条件で自粛を要請する(図2)。この一帯は富士山を世界文化遺産に登録した際に、「緩衝地帯」として自然保護を必要とする場所に指定された。一方の南側の土地については、すでに開発許可などを受けている場合には自粛要請の対象から外れる。

図2 対象区域の詳細地図。出典:富士市環境部

 富士市は12月1日付で行政指導方針を施行した。発電設備の規模を定めていないことから、出力などに関係なく全面的な自粛を求める。ただし行政指導には罰則がない。方針に従わないことで処分を受けた場合には、不服を申し立てることが可能になっている。とはいえ富士山麓の景観地区に太陽光発電設備を設置する正当な理由が必要で、現実的には設置が極めて難しくなったと考えるべきである。

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