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» 2013年12月24日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(39)高知:カルスト高原に吹く風を受けて、「電気料金のいらない町」へ

高知県と愛媛県のあいだを横断する「四国カルスト」は石灰岩で覆われた独特の地形が特徴だ。長く連なる高原には強い風が吹き、それを生かして40基の大型風車を建設する構想がある。高知県には再生可能エネルギーの資源が豊富にあり、太陽光やバイオマスを加えて導入量を拡大していく。

[石田雅也,スマートジャパン]

 高知県には「雲の上の町」がある。標高1000メートルを越える高原に広がる、人口4000人弱の梼原町(ゆすはらちょう)だ。この山間にある小さな町が、風力発電を中心に再生可能エネルギーの導入を積極的に進めている(図1)。

yusuhara_wind.jpg 図1 梼原町の位置と「梼原風力発電所」。出典:梼原町役場

 町内では1999年から、2基の風車を使って「梼原風力発電所」が稼働を続けている。1.2MW(メガワット)の発電能力があり、年間の発電量は平均して290万kWhに達する。一般家庭で約800世帯分に相当する供給量で、梼原町の全世帯の半分近くをカバーすることができる。

 年間の平均風速が7メートル/秒を超えるため、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は28%と高い。風力発電の標準的な設備利用率は20%程度であることから、それと比べて4割ほど多い発電量になっている。この好条件を生かして、さらに大規模な風力発電の開発プロジェクトが進行中だ。

 梼原町の北側につらなる「四国カルスト」にメガワット級の大型風車40基を建設して、隣接する4つの自治体を含む2万9000世帯の電力をすべて再生可能エネルギーで供給することを目指す(図2)。全体を3つのフェーズに分けて、現在は第1フェーズの10基を建設する計画の詳細を詰めている段階だ。

shikoku_karst.jpg 図2 四国カルストの風力発電計画。出典:こうち再生可能エネルギー事業化検討協議会

 第1フェーズでは1MWの風車10基か2MWの風車8基を想定している。このうち2基は既存の梼原風力発電所の設備を建て替える形になる(図3)。最近の大規模な風力発電では2MWクラスの設備を採用することが多く、8基で16MWの発電設備になる可能性が大きい。

 その場合の投資額は梼原町の試算では約51億円である。対して売電収入は設備利用率28%で計算すると、年間に約7億円になる。一方で風車のメンテナンスなど運転維持費に1年あたり1億円弱かかる。想定通りに発電を続ければ、10年程度で投資を回収できる見込みだ。梼原町の目指す「電気料金のいらない町」が現実になる。

shikoku_karst2.jpg 図3 四国カルスト風力発電計画の第1フェーズ完成イメージ。出典:こうち再生可能エネルギー事業化検討協議会

 高知県内には梼原町の周辺以外にも、風況に恵まれた地域は多くある。愛媛県や徳島県との県境にある四国山地のほぼ全域、さらに南部の沿岸地域でも洋上を含めて、平均風速が7メートル/秒を超える場所が広がっている(図4)。

kochi_wind.jpg 図4 高知県の年間平均風速。出典:NEDO、高知県林業振興・環境部

 四国山地の中央に位置する大豊町(おおとよちょう)では、東京電力と豊田通商の合弁会社であるユーラスエナジーホールディングスが27MWの風力発電所の開発プロジェクトを開始した。2016年の運転開始を目指して、現在は環境影響評価の初期段階にある。これから地元との調整が必要になるが、過疎と高齢化の問題に直面している地域だけに、新しい産業に対する期待は小さくない。

kochi_target.jpg 図5 再生可能エネルギーの拡大目標。出典:高知県公営企業局

 高知県は風況に恵まれているだけではなく、森林、日射量、降水量といった、再生可能エネルギーの資源が豊富に存在する。これまで十分に生かし切れていなかった資源に目を向けて、県全体でも再生可能エネルギーの比率を大幅に引き上げる目標を打ち出した(図5)。

 従来型の水力発電を加えた再生可能エネルギーの発電量は、県内の電力使用量に対して2007年の時点では16.8%だった。この比率を2020年に20%、さらに2050年までに50%へ引き上げる。

 そのために風力・バイオマス・太陽光・小水力のすべてに取り組む方針だ。現在のところ導入量が最も多いのは小水力だが、今後は風力のほかにバイオマスと太陽光の伸びが期待できる(図6)。

ranking2013_kochi.jpg 図6 高知県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 バイオマスでは森林資源を生かした木質バイオマスによる発電設備の建設計画が進んでいる。森林組合連合会が高知市で運営する木材団地の中に、発電能力が5MWの「土佐グリーンパワー発電所」を建設して、2015年4月に運転を開始する予定だ。間伐材などの未利用木材を破砕・乾燥する工程を含む一体型の発電所は日本初の試みになる。

 一方、太陽光発電では四国電力グループの四電工が県内の2カ所でメガソーラーの建設を進めている。そのうちの1つは四国山地の中央にある土佐町で計画中だ。標高612メートルの名高山(なこうやま)の頂上付近にある1万4000平方メートルの空き地に建設する(図7)。発電能力は1.2MWで、2015年2月に稼働する見込みである。

tosa_aki_megasolar.jpg 図7 土佐町のメガソーラー建設予定地。出典:四電工

 建設予定地の近くには吉野川が流れていて、夏になると渇水が問題になる「早明浦(さめうら)ダム」がある。このダムからの水流を使って、J-POWER(電源開発)が42MWの大規模な水力発電所を運営している。ただし渇水時には発電量が減ってしまう。メガソーラーで水力発電を十分に補完することは難しいが、夏の電力需要が増加する時期に豊富な日射量を生かした太陽光発電は有効な対策になる。

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −四国編−」をダウンロード

2015年版(39)高知:「再生可能エネルギーの電力が10万世帯分、木質バイオマスが地域をめぐる」

2014年版(39)高知:「バイオマス発電で全国1位に、太陽と風にも恵まれた南国の地」

2012年版(39)高知:「全国1位の森林率と2位の日照時間、木質バイオマスから太陽光へ」

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