四国の南半分を占める高知県は森林の比率が日本で最高の84%に達する山国で、木質を中心にバイオマスの利用が進んでいる。年間の日照時間が日本で2番目に長く、太陽光発電に適した環境でもある。県が推進中の共同事業方式でメガソーラーの誘致が本格的に始まった。
高知県の再生可能エネルギーで特に目を引くのは、バイオマス熱利用の多さである。西日本では最も多く、全国でも5番目の導入量を誇る(図1)。
最大の要因は県の84%を森林が占めている点にある。森林率では全国のトップで、ほかに8割を超えるのは岐阜県(82%)しかない。再生可能エネルギーの活用となれば第1に木質バイオマスに着目することになる。
木質バイオマスを成功させるうえで重要なことは林業との連携だ。未利用の木材を安定して入手できなければプロジェクトは成立しない。それが理由で実現しなかった例は全国に数多くある。
高知県では地元の森林組合連合会が木質バイオマスに期待をかけ、木材団地の中に発電設備を建設するプロジェクトに参画した。高知市内の木材団地に県内の間伐材などを集めて、燃料になる木質チップを作り、電力を作り出す。
木材の破砕・乾燥からチップの製造までを含む、一貫処理型の木質バイオマス発電所は日本で初めての試みだ。稼働予定は2015年4月である。発電能力は5MW(メガワット)、年間の発電量は3600万kWhを見込み、約1万世帯分の電力を供給できる規模になる。完成すれば木質バイオマス発電所のモデルケースになるだろう。
すでに稼働中の木質バイオマス発電の事例としては、住友大阪セメントが高知工場で実施している「石炭混焼発電」がある(図2)。
この工場は電力を100%自給するために石炭による火力発電設備を稼働させていて、燃料の石炭に県内の未利用木材などから作った木質チップを混ぜて使っている。年間に約4万トンにのぼる木質チップを利用して1600万kWh程度の電力をバイオマスで作り出す。
同様のセメント工場におけるバイオマス発電では、太平洋セメントの土佐事務所(旧・土佐工場)で進められているプロジェクトも注目に値する。もともとセメント工場の電力供給源として石炭火力発電設備を稼働させていたが、セメント工場の廃止に伴ってバイオマス専用の発電設備に改造することにした(図3)。
このバイオマス発電設備では、燃料としてアブラヤシの搾油後に残る「パーム・カーネル・シェル」と呼ぶ殻を利用する。パーム・カーネル・シェルは主に東南アジアからの輸入が多く、最近はバイオマス燃料として海外でも使われるようになっている。
太平洋セメントの敷地内にある発電設備は新電力のイ―レックスが譲り受けてバイオマス発電用に改造し、2013年6月から運転を開始する予定だ。発電能力は20MWになり、約4万世帯分の電力量を見込んでいる。
企業を中心にバイオマス発電が着実に広がる一方で、自治体が普及に力を入れているのが太陽光発電だ。高知県は南側が広く太平洋に面していて、年間の日射時間は全国でもトップクラスにある。太陽光による年間の発電量は愛知県や静岡県と並んで最高レベルを期待できる(図4)。
最近まで県内にメガソーラーはなかったが、自治体が誘致に力を入れ始めたことで2012年に入ってから建設計画が相次いで始まった。高知県がメガソーラーを誘致するために新たに導入した方法が「こうち型地域還流再エネ事業スキーム」である。
このスキームは発電事業者が少ない投資でメガソーラー事業を開始できるようにすることが狙いだ。事業費の3分の2までを県と市町村が負担して、発電事業者が残りの3分の1以上を負担する。発電によって得られた収益は配当として県と市町村に分配する仕組みである(図5)。
第1弾として、安芸市にある7万2000平方メートルの土地にメガソーラーを建設するプロジェクトの公募が2013年2月12日に始まった。1億4000万円の投資額を高知県・安芸市・発電事業者の三者で分担する。3月末までに事業者を確定して、4月から建設計画に着手する予定だ。
このプロジェクトが正式に決まれば、同じスキームを使って県内の各市町村にメガソーラーが広がっていく期待は大きい。
2014年版(39)高知:「バイオマス発電で全国1位に、太陽と風にも恵まれた南国の地」
2013年版(39)高知:「カルスト高原に吹く風を受けて、電気料金のいらない町へ」
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