海は最後のフロンティア、木の浮力を生かして太陽光発電自然エネルギー(1/2 ページ)

大阪府は海面上での太陽光発電にどのような課題があるのか、実証実験を通じた検証を2014年3月に開始した。林業の副産物として生じる間伐材を使って木製フロートを組み立て、太陽電池を海に浮かべる。

» 2014年03月31日 12時10分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 水面は条件さえ整えば太陽光発電の「敷地」として利用可能だ。例えば埼玉県の事例では出力約1.2MWのメガソーラーを調整池の水面に作り上げることができた(関連記事)。この事例は淡水の内水面を対象としたもの。最後のフロンティアは海面だろう。淡水面と比べ、波風の影響が強く、塩分対策が加わる難しい立地だ。

図1 阪南港木材地区の海面に設置したところ 出典:大阪府

 「海水面でソーラーフロートを使って発電するという、全国初の実証実験を複数の企業の協力を得て大阪湾で進める。約5年間の計画だ。台風の波などの影響も調べ、海水面での太陽光発電の市場化を狙いたい」(大阪府環境農林水産部 みどり・都市環境室みどり推進課 森づくり支援グループ)*1)。2014年3月28日には陸上で組み立てたソーラーフロートをクレーンで海面へ下ろし、数日をかけて目的地に運び、固定した(図1)。

図2 大阪府内の2カ所が対象。図内南側の海面の写真が図1に相当する

 現場は、貯木場として使われていた府内の2カ所の水面。1つは図1に示した阪南港木材地区(忠岡町新浜)。もう1つは1号池水面(住之江区平林南)だ(図2)。

間伐材の有効利用がもう1つのテーマ

 今回の実証実験には、もう1つテーマがある。間伐材の有効利用だ。日本の林業は第二次世界大戦後、はげ山に近くなった状態から森を回復することを大きな目標として掲げてきた。戦後70年。当時植林した樹木は伐採に適したサイズに育っている。

 「当課は森林や林業を所管しており、成熟しているスギ、ヒノキの利用を考えている。伐採時に生まれる間伐材の有効利用法も課題だ。そこで、ソーラーフロート自体や、その上で太陽電池モジュールを支える架台を間伐材で作ることができないかと考えた。木は金属と違ってさびることがない。防腐処理*2)を施すことで金属よりも海面設置に適している場合がある」(同グループ)。

 今回の実証実験の名称は「木製架台等太陽光パネル(フロート式)モデル実証」だ。主体は大阪府木材協同組合連合会。実際に国産のスギとヒノキの間伐材を利用する。

 資金面でも林野庁の支援を受けている。同庁の「森林整備加速化・林業再生事業」だ。木材の新たな利用方法を探る事業であり、2013年度までプロジェクトに対して補助金を支給する。「約3200万円の補助金を受け、府を通じて大阪府木材協同組合連合会に支給する」(同グループ)。

複数の企業の支援を受ける

 これまでほとんど試みられたことがない、太陽電池の海上面設置。大阪府と府の木材協同組合連合会だけでは実証実験の難易度が高かった。そこで、府内に立地するさまざまな分野の企業の力を借りた。

 「太陽電池などを搭載したソーラーフロートが本当に安定して浮くのかどうかは、浮き桟橋などを扱う企業であるゼニヤ海洋サービスに寸法などの計算をお願いした。木枠を製造する企業である越井木材工業には製作を依頼した」(同グループ)。

 利用した太陽電池モジュールはシャープの産業用製品である「ND-193CA」。多結晶シリコンを用いた製品であり、192.5Wの最大出力を得ることができる。シャープへ相談したところ、国内の規格上の耐塩性については保証があるものの、これは海浜に設置する場合のものであるため、海水面上での利用を想定した実験は例がないということだったという。

 「海水面用の製品は世の中にないようだ。われわれもここが一番苦労しそうだと考えている。新しい太陽電池モジュールや配線、電設(パワーコンデショナー)を開発することはせず、対応策を考えることになった。例えば配線には巻物を施し、配管などに収めてガードするといった対策だ」(同グループ)。加えて実証実験では、波しぶきを避けるため、太陽電池モジュールを海面から約50cm上に配置することになった。

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