住宅の決め手は「熱」、太陽電池3.8kWでゼロエネルギースマートハウス(1/2 ページ)

パナソニックは正味のエネルギー消費量がゼロになり、光熱費を不要にできる戸建て住宅「スマートエコイエゼロ」の販売を2014年4月に開始した。高い断熱性を持たせることで空調に必要なエネルギーを抑えたことが特徴。太陽光発電も併用する。

» 2014年04月04日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 あと6年足らず、2020年までに新築住宅の基準が変わる。標準的な新築住宅では一次エネルギー消費をゼロにする――このような政策を経済産業省や環境省、国土交通省が推進している。

 「ゼロエネルギーハウス」を実現する一般的な方法は、住宅に省エネ、創エネ、蓄エネを取り入れること。消費するエネルギーを省エネでまず減らす、その上で太陽光発電システムなどの創エネを導入し、使った以上のエネルギーを生み出す。夜間の消費は蓄エネでまかなう。

 このような手法は分かりやすい。節電や電力の地産地消といったなじみ深いキーワードとも結び付く。だが、忘れてはならない要素が1つある。熱の管理だ。

 住宅が利用するエネルギーのうち、空調が占める割合は高い。地域によって多少異なるものの、4分の1を超える。空調があまり必要ではない家を作ることによって、遠回りのようだが、省エネや節電の効果を倍増できる。西日が厳しい家や底冷えがする家ではゼロエネルギーハウスは難しい。

断熱を重視した住宅

 ゼロエネルギーハウスに最も近い住宅が、「スマートハウス」だ。省エネ、創エネ、蓄エネによって光熱費を減らし、停電時の非常用電源を確保することがスマートハウスの目的だ。積水化学工業の調査によれば、同社のオール電化住宅のうち、13%でゼロエネルギーを実現できているという(関連記事)。複数の住宅メーカーがスマートハウスを高度化することで、ゼロエネルギーを目指している。

図1 ゼロエネルギーを実現可能な戸建て住宅「スマートエコイエゼロ」 出典:パナソニック

 パナソニックは街区全体をゼロエネルギー化するなど、これまでもゼロエネルギーに注力している(関連記事)。2014年4月に販売を開始した「スマートエコイエゼロ」(図1)では高い断熱性能を実現する「サーモロックシステム」を打ち出した(図2)。外壁と壁面内部、天井、床、窓の全てを高断熱にすることで、家庭内の電力料金を削減する。結果として温度差が少ない室内空間を実現できるため、これも空調を減らすことにつながる。

図2 家全体に高断熱性をもたせた 出典:パナソニック

 サーモロックシステムを導入することで、全国でも最も厳しい北海道の次世代エネルギー基準*1)を達成できるとした。

 外壁にはサーモロック壁パネルをかぶせ、壁面内部には厚さ105mmのロックウール断熱材を入れた。天井のロックウール断熱材の厚さは200mm。床面下には厚さ100mmのフェノールホーム断熱材を敷く。熱の出入りが一般に最も激しい窓にも工夫がある。空気よりも熱を伝えにくいアルゴンガスを封入した低放射ガラス(Low-Eガラス)と、やはり熱を伝えにくい樹脂サッシを組み合わせた*2)

*1) 熱損失係数「Q値」は1.6W/m2・Kである。Q値は値が小さいほど保温性能が高くなる。1.6という値は地域区分I(北海道道央など)の基準値である。なお、北海道と沖縄、離島の他、積雪が1.5m以上の地域ではスマートエコイエゼロを販売しない。
*2) この組み合わせが通常のアルミサッシと比較してどの程度有効なのか、関連記事で解説した。

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