太陽光より高効率な「チューブ」、お湯を通すと246Wを生む自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2014年04月22日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

どの程度、発電できるのか

 検証試験のそもそもの目標は温水と冷却水を使って、400W/m3(装置の体積1立方メートル当たり400ワット)という出力を達成することだ。温水と冷却水の温度差が70度の場合を考えている。熱発電ユニットの体積は1つ0.1m3。3つで0.3m3だ。

 検証試験の結果は、温度差68.5度のとき、440W/m3であり、目標を約10%上回っている。「この装置は温度差(ΔT)の二乗に比例した出力が得られる。96度の温水と、5度の冷却水を使ったときは246Wの出力を得られた。出力密度に換算する(0.3で割る)と、820W/m3に相当する」(パナソニック)。

 1年間をかけた検証試験では温水や冷却水の温度をさまざまに変えて出力の変化を見てきた。その結果が図5だ。「連続条件に置き換えると、200時間安定して電力が得られたことになる」(パナソニック)。

図5 温度差と電力の関係。目標値(黒点線)と実測値(赤点と外挿値の赤線) 出典:パナソニック

 熱発電ユニットが実用に適しているかどうかは、単位時間に使う温水や冷却水の量にもよる。同社からは流量(m3/分)に関するコメントを得ることはできなかったが、「ユニット全体の入り口と出口の温度差は、検証実験では2〜5度である」(パナソニック)という。

ゼーベック効果を利用

 パナソニックが熱発電チューブで利用した原理は、一般に「ゼーベック効果」と呼ばれており、比較的古くから知られている*3)

*3) ゼーベック(Thomas Johann Seebeck)は、ドイツの物理学者、化学者、医師。1821年にビスマス線と銅線で作った「回路」の一端を加熱すると、回路内に置いた方位磁石の向きが変わるという形で、ゼーベック効果を発見した。ゼーベック効果の逆の働きをするのがペルチェ効果。電流を通じると、素子の一端が冷え、逆の端が熱を発するため、CPU用クーラーや動作音がない冷蔵庫(ペルチェ冷蔵庫)などで実用化されている。

 ゼーベック効果を生み出すには、半導体が必要だ。図6にあるような低温側金属電極(−)〜n型半導体〜高温側金属電極〜p型半導体〜低温側金属電極(+)という回路を作ると、この方向に電流が流れる。形状がΠ(パイ)に似ているため、Π型構造と呼ばれている。

 ゼーベック効果を活用しやすい半導体として最も広く使われているのがビスマス(Bi)とテルル(Te)からなる化合物。n型、p型ともビスマステルルを使うことが多く、パナソニックの熱発電チューブでも同様だ。

図6 ゼーベック効果を生むΠ型構造

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