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» 2014年04月23日 07時00分 UPDATE

自然エネルギー:生活排水が自動車の燃料へ、細菌の作ったメタンから水素を抽出 (1/2)

下水処理場に水素ステーションが併設されて、燃料電池車が並ぶ。福岡市はこのような未来像を描いている。処理場に集まった汚泥から不純物の多いメタンを作るところまでは全国各地で実現している。ここから高純度の水素を量産し、車に供給するという計画が新しい。なぜ水素なのか、どうやって作るのか、解説する。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 2015年に販売が始まる燃料電池車は水素ガスで動く。このため、水素の製造や運搬、保管、供給などインフラ全体を作り上げる動きが盛んだ。例えば、2015年までに100カ所の水素スタンドを先行整備しようとする計画が進んでいる(関連記事)。

 ここに発想を転換して普及を狙う動きがある。燃料電池車は都市部から導入が進むだろう。都市から日々生まれる「資源」が使えないだろうか。

 都市部は人口が集中しているため、下水処理場には大量の汚泥(有機物)が集まる。汚泥のままで廃棄しようとすると、重量・体積がかさむため、「消化槽」を使ってガスに分解する。消化槽内に置いた酸生成菌やメタン生成菌が、有機物を単純な化合物であるメタン(CH4)や二酸化炭素(CO2)などに変えてくれるのだ。このような複数の化合物が混合したガスを「バイオガス」と呼んでいる。

 細菌が活動しやすい温度は30〜35度、かくはんも必要だ。そこで取り出したバイオガスを燃やして熱などを得ている。だが、必要なガスは少量であり、多くは無駄になっていた*1)

 2013年4月には栃木県の処理場に下水汚泥から発生するバイオガスを利用する発電機が取り付けられ、固定価格買取制度(FIT)による売電が始まった(関連記事)。バイオガスからメタンを取り出し、改質器を通じて水素を得、直後に燃料電池へ通じて発電する。下水汚泥−バイオガス−水素というチェーンが動き始めたことになる。

*1) バイオガスから取り出したメタンの純度を高め、天然ガス自動車向けに販売している処理場もある(関連記事)。

処理場と燃料電池車をつなぐ

 栃木県の事例ではバイオガスから取り出した水素を燃料電池に送り込んでいる。燃料電池車に水素を送り込むというところまであと1歩だ。

 福岡市が進める「水素リーダー都市プロジェクト〜下水バイオガス原料による水素創エネ技術の実証〜」はまさに燃料電池車を目指している。市の他に民間事業者2社と九州大学が参加する共同研究体で臨み、2014年4月には国土交通省の2014年度「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」にも採用されている。「事業費約13億円は全額国の補助でまかなう」(関係者)。プロジェクトの全体像を図1に示した。

yh20140423Fukuoka_bigpicture_590px.jpg 図1 プロジェクトの全体像。赤い点線で囲んだ部分を開発する 出典:三菱化工機

 2014年7月中旬に設備の設置工事に着手し、2015年2月に完成、同3月に試運転を始め、同4月にシステム全体の運転を開始する予定だ。国との契約期間は2015年3月末までだが、その後も実証・運営を継続する予定だ。実証事業から得たノウハウを2016年3月にガイドラインとして発表する。

yh20140423Fukuoka_map_250px.jpg 図2 福岡市中央区と実験用地の位置

 プロジェクトに関係する4者の役割分担は以下の通り。福岡市は中部水処理センター(中央区荒津、図2)内の実験用地を提供し、センターに併設されている汚泥処理施設で得たバイオガス*2)を水素製造装置に供給する。三菱化工機はプロジェクトの代表であり、水素製造装置と水素供給装置を設計、製造する。ガイドラインの検討も進める。豊田通商の役割は民間視点で事業性を評価することだ。九州大学はガイドラインを検討評価する。

*2) 「プロジェクトが始まるまではバイオガスをボイラーで燃焼し、消化槽の加温に用いていた。一部は消化ガス発電にも利用している」(三菱化工機)。

 プロジェクトの成否を分けるのは何だろうか。水素を取り出すことが成功なのではないという。「3つの検証項目がある。第1に燃料電池車に供給可能な水素の品質だ。第2に安定して水素を製造できるかどうかだ。汚泥の量は日によっていくぶんばらつきがある。第3に事業として(経済的に)成り立つかどうかだ。水素の価格がどの程度になり、バリューチェーンを新たに作り上げることができるかどうかが重要だ」(豊田通商)。

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