電力会社を解体、「発送電分離」なしに改革は終わらず電力自由化の3つのステップ(3)(2/2 ページ)

» 2014年05月02日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
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2020年までに発送電分離は待ったなし

 最大手の東京電力が率先して発送電分離を実施すれば、他の電力会社も追随せざるを得ない。巨大な電力会社の組織と利権を解体することになるため、抵抗する勢力は少なくないが、第2段階の小売全面自由化まで進めば、必然的に発送電分離を実施する流れになる。

 小売全面自由化を実施する時点で、従来の電気事業者の区分は抜本的に変わる。電力会社(一般電気事業者)を含めて、すべての事業者は「発電事業者」「送配電事業者」「小売電気事業者」の3種類に再編する(図5)。

図5 小売全面自由化に伴う電気事業者の区分変更案(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 特に中立性を求められる送配電事業者は認可制によって料金面の規制を受けることになる。現在の電力会社が電気料金の認可を受ける場合のプロセスと同様に、原価をもとに厳正な審査を受ける必要があり、発電事業や小売事業から独立した収益管理が不可欠になる。送配電事業の独立性を高めることは避けて通れない道筋だ。

 発送電分離によって電力会社の送配電部門が独立すれば、第1段階で設立する「広域的運営推進機関」との役割分担も明確になる。広域機関が地域間の需給調整を図りながら、地域ごとの運用は送配電事業者が担当する2段構えの体制である(図6)。

図6 発送電分離に伴う送配電事業者(系統運用者)の役割(画像をクリックすると拡大)。出典:電力システム改革専門委員会

 このような新しい運用体制ができあがると、従来よりも計画的かつ機動的に全国レベルの需要と供給を調整できるようになる(図7)。発電事業者や小売事業者は中長期の需給計画をもとに事業を展開できるため、設備投資や営業体制の強化などを進めやすくなる。一方で送配電事業者は電力の安定供給に専念して、必要があれば取引市場から電力を調達する。

図7 中長期と短期の需給調整の仕組み(画像をクリックすると拡大)。出典:電力システム改革専門委員会

 政府は発送電分離を実施するための法改正を2015年の通常国会で成立させる方針だ。実施時期は2018〜2020年を予定している。長年にわたって地域独占状態を維持してきた10社の電力会社を解体することになるため、実施時期に余裕を持たせる。発送電分離と合わせて、小売全面自由化後の経過措置として部分的に残る電気料金の規制も完全に撤廃する。まさに自由競争が2018〜2020年に始まる。

 はたして電力会社が競争力を高めてシェアを維持できるのか、あるいは数多くの発電事業者や小売事業者に顧客を奪われて衰退していくのか。いずれの場合でも利用者には電気料金の低下をはじめとして、さまざまなメリットがもたらされるはずだ。2020年代には日本の電力市場は様変わりしている。

(連載終了)

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