和歌山県の山間部に新しい太陽光発電所が完成した。産業廃棄物の不十分な焼却によって有害なダイオキシンに汚染されてしまった土地を無害化処理した場所である。土地を掘り起こせない状況から、設置が簡単な太陽光発電所を建設して再利用にこぎつけた。
和歌山県の北東部にある橋本市で5月12日に「和歌山・橋本ソーラーウェイ」が運転を開始する。この太陽光発電所の近くには、川が流れて池が数多くある。周辺に住宅地が広がる、のどかな地域だ(図1)。ところが20年前から産業廃棄物が大量に持ち込まれて、しかも焼却が不十分だったために高濃度のダイオキシンに汚染された場所でもあった。
地域住民が行動を起こした結果、紆余曲折を経て、和歌山県は汚染された土壌をコンクリートで封じ込める方法などによって無害化処理を施した。ただし土地を再利用するにあたっては地中を深く掘り起こすような工事はできず、農地として使うのにも抵抗があった。無害化処理してから長らく使われないままだった土地に、地中を掘らなくても設置できる太陽光発電所を誘致することにした。
公募で選ばれた国際航業グループが1万2500平方メートルの用地に、0.7MW(メガワット)の発電設備を建設して事業を開始する(図2)。年間の発電量は72万kWhを見込んでいて、一般家庭で200世帯分の電力使用量に相当する規模になる。発電した電力は固定価格買取制度を通じて、20年間にわたって電力会社に売電する計画だ。
現地には地域住民が結成した「産廃処理場を撤去させる会」と和歌山県の連名により、ダイオキシン汚染の発生過程と汚染土壌の処理方法を記録した碑文が2005年3月に建てられた。碑文の最後には、循環型社会実現への決意表明が記されている。それから10年近くが経過して、太陽光発電所が稼働する。
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