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» 2014年05月08日 13時00分 UPDATE

法制度・規制:電力会社がガス事業の規制緩和を要求、自由化で全面対決へ

電力市場の改革と並行して、ガスの小売全面自由化に向けた議論が活発になってきた。5月2日に開催した政府の委員会では、東京電力と関西電力がガス事業の制度改革を訴えた。ガス会社が保有する供給設備の利用条件や利用料金の是正などを求めている。

[石田雅也,スマートジャパン]

 電力会社は火力発電用に大量のLNG(液化天然ガス)を調達して、ガス会社に匹敵するLNGの購買能力がある。電力市場が縮小する一方でガス市場が拡大していることから、新たな収益源としてガスの小売事業を拡大する計画だ。電力と同様にガスの小売全面自由化が早ければ2016年にも実施される見通しで、電力会社は自由化に伴うガス事業の規制緩和を政府に訴え始めた。

 5月2日の「ガスシステム改革小委員会」の場で、東京電力と関西電力がガスの託送供給の問題を取り上げた。託送供給の制度は電力市場にも設けられていて、電力会社の送配電ネットワークを他の事業者が利用できるものである。それと同様に、ガス会社の導管を他の事業者が利用して、顧客にガスを供給することが可能になっている。

 関西電力が問題視している点は、託送供給にあたってガスの製造量(電力の発電量に相当)と顧客の需要量を一致させる「同時同量」に関する規制である(図1)。託送供給を委託する事業者は製造量と需要量の誤差を10%以内に抑えないと、ペナルティとしてガス会社に超過料金を支払わなくてはならない。これも電力で同様の制度があり、ガス特有のものではない(電力の場合は3%以内が託送供給の条件)。

kanden_gas_sj.jpg 図1 ガスの託送供給の仕組み。出典:関西電力

 ただし関西電力によると、既存のガス会社は導管ネットワークの貯蔵機能を活用して、おおむね1日単位で製造量と需要量を調整して同時同量を実現している。これに対して新規参入の事業者は1時間単位の同時同量を求められるために、顧客の施設に通信設備を設置する必要がある。しかもガス会社用の通信設備のコストも負担しなくてはならない。今後は現実的に1日単位の同時同量を条件にして、通信設備を不要にすべきだと主張する。

 一方で東京電力は託送供給の料金面で問題点を指摘している。電力市場では電力会社が地域ごとに送配電ネットワークを独占的に運用しているが、ガス市場では数多くの事業者が同じ地域内で導管を運用している。そのために複数の事業者の設備を経由して託送供給を実施する場合があり、それぞれの事業者に託送料金を支払わなくてはならない(図2)。これでは既存のガス会社と公平な競争環境にならないと訴える。

toden_gas_sj.jpg 図2 ガスの託送供給のコスト構造。出典:東京電力

 東京電力は託送料金の水準を同一にするか、それが難しい場合には託送供給のコストを透明にすべきであると要求している。託送供給のコストを透明にするためには、電力会社の「発送電分離」と同様に、ガス会社は導管事業の収益管理を独立に実施する必要がある。ガス市場の改革は電力市場と同じ方向へ進む可能性が出てきた。

 実際には、ガスの自由化は電力よりも大幅に進んでいる。小売が自由化されている大口顧客向けの市場では、すでに新規参入者のシェアは15%を超えた(図3)。電力市場では4%程度にとどまっているのと大きな違いがある。

gas_market2_sj.jpg 図3 新規参入者によるガスと電力の販売量シェア(小売が自由化されている大口顧客向け)。出典:資源エネルギー庁

 さらに電力会社のガス販売量も相当な規模に拡大している(図4)。新規参入者の中で販売量が最も多いのは関西電力で、ガス会社で第3位の東邦ガスと比べても3分の1を上回る規模がある。今後の小売全面自由化によって、電力会社のガス販売量がいっそう増加していくことは確実だ。

gas_market3_sj.jpg 図4 大手のガス会社と主要な新規参入者のガス販売量(小売が自由化されている大口顧客向け)。出典:資源エネルギー庁

 こうした動きに対抗して、東京ガスや大阪ガスをはじめ大手のガス会社が発電事業の拡大に乗り出している。電力とガスが混在する形で自由化が進み、さまざまな規制も緩和されて、激烈な顧客獲得競争が始まることは必至である。

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