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» 2014年06月03日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2014年版(8)茨城:太陽光発電で全国2位、メガソーラーが港や湖から線路沿いまで広がる

茨城県では風力に続いて太陽光発電の導入プロジェクトが急増中だ。固定価格買取制度の認定設備は全国で第2位の規模に拡大した。太平洋側の港や湖に近い場所には土地の特性に合わせた建設方法でメガソーラーが造られている。県内に数多くある工業団地でもメガソーラーの誘致が活発に進む。

[石田雅也,スマートジャパン]

 茨城県が2012年に実施した県民の意識調査では、実に85%の回答者が新エネルギーの導入に積極的に取り組むべきと回答した。これを受けて新たに策定したのが「いばらきエネルギー戦略」である。自然環境や産業構造などの特性をもとに8つの重点プロジェクトを決めて、県内5つのエリアで対策を進めていく(図1)。

図1 「いばらきエネルギー戦略」の重点プロジェクトと展開エリア。出典:茨城県企画部

 8つの重点プロジェクトの中でも、全エリアに展開するのがメガソーラーの導入促進だ。太平洋に面して平坦な土地が多い茨城県は日射量も豊富で、メガソーラーに適している。電力需要の多い首都圏に近いことも追い風になって、大規模な建設計画が相次いで進んでいる。

 固定価格買取制度が始まった2012年7月から2013年12月までの1年半に、茨城県で認定を受けた太陽光発電設備は1776MW(メガワット)に達した(図2)。北海道に次いで全国で第2位の規模になり、すべての設備が稼働すると県内の5割以上の家庭で利用する電力をカバーすることができる。

図2 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

 このうち1000MW近くを占めるのがメガソーラーで、建設場所は226カ所にのぼる。すでに10MW以上の大規模なメガソーラーがいくつか運転を開始していて、建設方法には地域の特性に合わせた工夫が随所に見られる。その1つが南部の潮来市(いたこし)にある。

 潮来市は周囲を大きな湖で囲まれた水郷として知られる。メガソーラーを建設した場所は広さが18万平方メートルの市有地で、もともと農地だった地域を工業用地に転換した。しかし地盤が軟弱で工場の基礎工事に多額の費用がかかるために、長年にわたって使われないままの状態だった。

 その広大な未利用地に6万枚の太陽光パネルを設置して、発電能力が14MWある関東で最大級の「水郷潮来ソーラー発電所」が2014年2月に運転を開始した(図3)。潮来市が新電力のミツウロコグリーンエネルギーなどと共同で設立した特定目的会社が運営している。軟弱な地盤にも耐えられるように、地中に杭を打たない置き式と呼ぶ建設方法を採用した。

図3 「水郷潮来ソーラー発電所」の全景。出典:ミツウロコグリーンエネルギー、レノバ

 年間の発電量は1470万kWhを見込み、一般家庭で4000世帯分の電力を供給することができる。売電収入は年間に5億円を超える。潮来市は土地の賃借料を含めて、固定価格買取制度で保証される20年間に11億円の収入を得られる見通しだ。

 メガソーラーの隣接地にある「道の駅いたこ」の屋根にも太陽光パネルを設置して、さらに移動式の蓄電池を導入する。太陽光発電と蓄電池を組み合わせて、災害時でも長期間にわたって電力を供給できる体制を作り、道の駅を地域の防災拠点として利用する狙いである。

 設備面で特徴のあるメガソーラーとしては、化学メーカーのカネカが工場の敷地に建設した事例が先進的だ。太平洋につながる鹿島港に面した20万平方メートルの用地に、自社製の薄膜シリコン太陽電池12万枚を設置した(図4)。発電能力は10MWで、薄膜タイプの太陽電池を使ったメガソーラーでは日本で最大の規模になる。

図4 カネカが鹿島工場に設置したメガソーラー。出典:カネカ

 薄膜タイプのシリコン太陽電池は現在の主流である結晶タイプと比べて、薄くて軽量ながら発電効率が低い欠点がある。ただし日射熱による温度の上昇に強く、夏の発電量の低下を防ぐことができる。このため最近ではメガソーラーに採用するケースも増えてきた。

 カネカのメガソーラーでは年間の発電量を1100万kWhと想定している。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は12.6%で、ほぼ標準値に近い水準になる(固定価格買取制度では12〜13%を想定)。実際に結晶タイプと比べて夏の発電量を大きくすることができれば、地域の電力需要のピーク対策にも貢献する。

 茨城県内には工業団地が数多くある。県全域で22カ所にのぼるが、大半は企業の誘致が思うように進まず、広い空き地が残っている。そうした未利用の土地を活用したメガソーラーの開発計画が続々と始まる。特に規模が大きいのは東南部の「北浦複合団地」で4社の発電事業者が実施するプロジェクトだ。

 190万平方メートルに広がる工業団地の中で、35万平方メートルの敷地を使って合計28MWのメガソーラーを建設する(図5)。NTTファシリティーズをはじめ4社が区画ごとに発電設備を設置する一方、電力会社の送配電ネットワークと連系するための受変電設備は共同で建設・運営してコストダウンを図る。国内では初めての試みとして、2014年6月中に電力の供給を開始する予定である。

図5 「北浦複合団地」の全景(上)とメガソーラーの建設予定区画(下)。出典:茨城県産業立地推進東京本部、NTTファシリティーズ

 茨城県のメガソーラーは鉄道の線路沿いにも広がる。県のほぼ中央にあるJR常磐線の2本の線路にはさまれた細長い土地に、4MW分の太陽光パネルを設置する計画が進んでいる(図6)。以前は鉄道貨物の操車場があった場所だが、JR東日本は土地の有効活用を目的にメガソーラーを建設することにした。2015年3月までに運転を開始する計画で、1200世帯分の電力を供給する。

図6 JR東日本が常磐線の線路に沿って設置するメガソーラー。出典:JR東日本

 各地域で続々と稼働するメガソーラーによって、茨城県の電力自給率は急速に高まる見通しだ。地域の特性を生かした風力発電やバイオマス発電の導入も活発に進み、再生可能エネルギーの導入量は関東で随一になる。独自のエネルギー戦略で8つの重点プロジェクトを推進しながら、県民が求める新しいエネルギー供給体制を2020年までに急いで構築していく。

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −関東・甲信越編 Part1−」をダウンロード

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2015年版(8)茨城:「メガソーラーが50カ所以上で動き出す、風力は洋上へ、バイオマスは森林から」

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